護憲派よ 今こそ「九条による平和」を主張せよ

 米朝関係がこれまでになく緊迫している。米国は、中国が北朝鮮に圧力をかけて核実験や米国に届くICBM(大陸間弾道弾)の開発をやめさせなければ「自分たちで解決する」と言明している。言葉通りに受け止めれば、武力攻撃もありうるということである。

 そこで第二次朝鮮戦争のXデーはいつか、レッドラインはどこか、さらには日本も攻撃対象となるのか、などと言った報道がなされている。むろん何が起こるかは分からない。ただ、米国が北朝鮮を攻撃すれば、北は韓国に向けて反撃する可能性は高いということは言えよう。

 また、最近のミサイル発射について、北朝鮮は在日米軍基地攻撃の訓練だとも言っているが、そうなればまさに「日本有事」である。日本が攻撃される可能性もこれまでになく高まっていることは確かである。

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 こんな緊迫した事態を見ていると、一昨年の平和安全法制論議の頃、反対派が掲げていた主張がいかにバカげた議論だったかを思い出してしまう。

 例えば、集団的自衛権の限定的行使に踏み込まないでも「個別的自衛権」で充分対処できると言っていたのは、確か当時の民主党の岡田代表だったと記憶している。北のミサイル攻撃に対して、反撃する手段を持っていない日本がどのようにして個別的自衛権を発動するのか、メディアは今こそ彼にインタビューすべきである。同時に、策源地攻撃能力を持つべきだという自民党の提言に対して、どう考えるのかも併せて質問していただきたいものである。

 また、共産党の志位委員長は「中国や北朝鮮はリアルな脅威ではない」と言って平和安全法制に反対した。今は違うと言うかもしれないが、それでも、彼らの好きな言葉で言えば、過去の発言に対する「説明責任」はあろう。

 安倍首相が示したパネルで説明した、子供を抱いて避難するお母さんの絵を茶化した野党議員もいたことも思い出す。韓国から避難する邦人を乗せた米国艦船を自衛艦が警護することなどあり得ないと解説した評論家もいた。しかし、いまや邦人避難は、民間機であろうが米軍艦船であろうが、あらゆる手段を使って実行しなければならないという現実の問題となっている。

 現状では自衛隊が韓国の領域に入ることは、韓国政府の了解がないため難しいが、それでも法律がないために出来ない時代と、平和安全法制によって自衛隊による邦人の救出や警護も可能になった今日とでは決定的な差がある。

 平和安全法制が成立すれば、日本は「戦争する国になる」と叫んでデモをしていた人たちもいた。あれから二年たった今、彼らは現実に起こっている一触即発の事態は北朝鮮によるものではなく、日本の平和安全法制のために起こったと言うのだろうか。是非、現状認識を聞きたいものである。

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 要するに、時間が経過して現実が明らかになれば、主張の正否は自ずと明らかになるということである。平和安全法制だけではない。九条を巡る憲法改正論議の正否についても同じことが言える。

 護憲派は、日本の平和は憲法九条が守ってきたと主張してきた。ならば、今こそ護憲派は「憲法九条があるから日本の平和は守られている」「だから、大丈夫だ」と言わねば筋が通らない。そうすれば、憲法九条改正を巡る論議は格段と整理され、誰の目にもその是非が明らかになるのではあるまいか。(日本政策研究センター所長 岡田邦宏)

〈『明日への選択』平成29年5月号〉