国籍はプライバシーか

 加計学園問題、都議選での自民党大敗北……反安倍報道とも言えるニュースが続くなか、完全にスルーされてしまった問題がある。民進党代表・蓮舫氏の二重国籍問題である。

 七月十八日、蓮舫代表が戸籍謄本(部分)、台湾国籍の離脱申請書、失効した台湾旅券の三点を提示したことで、昨年十月に台湾籍からの離脱、日本国籍の選択をしたことが明らかとなった。これで現在は二重国籍が解消されていることは証明されたが、同時に十七歳に日本国籍を取得してから約三十年間、参議院議員初当選のときも国務大臣就任時も民進党代表選挙のときも、ずっと二重国籍だったことがはっきりした。

 蓮舫代表は、台湾籍離脱、日本国籍選択という国籍法の手続きをとらなかったのは、二重国籍状態にあることを知らず、「故意ではなかった」と釈明したが、国籍法の定める義務に反してきた、つまり法律違反を続けて来たという事実にかわりはない。ましてや「父は台湾で、私は二重国籍なんです」(週刊現代・九三年二月六日号)などと発言していたのだから、今さら「故意ではなかった」と言っても説得力があるとは思えない。

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 一方、蓮舫代表の二重国籍問題をプライバシーの問題だと矮小化し、戸籍の公開に反対した勢力がいる。朝日新聞の社説は「プライバシーである戸籍を迫られて公開すれば、例えば外国籍の親を持つ人々らにとって、あしき前例にならないか」(七月十三日朝刊)と戸籍謄本公表を批判した。

 戸籍は一般的にプライバシーに属すると言っても、蓮舫代表の場合、国籍選択の事実を証明できるのは戸籍謄本しかないのだから、その必要部分を公開することに問題があるはずがない。

 そもそも国籍はプライバシーなのか。ヨーロッパには一般国民に身分証明書の常時携帯を義務づけている国も少なくない。ましてや蓮舫代表のような国会議員が、プライバシーだからといって国籍を証明する戸籍を明らかにしなければ、日本の国会議員とは言えまい。

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 国籍はそんなプライバシーの問題でもなければ、単に身分の問題というだけでもない。すぐれて国家に対する忠誠の問題である。国籍を取得するに当たり、アメリカ、イギリスなどは国家に対する忠誠を誓うことを必須条件としている。最近、ロシアも忠誠宣言をさせることを決定したという。

 かつてヨーロッパ諸国では、兵役の義務があったため国籍取得の際に特別な忠誠宣誓を求めなかったが、冷戦終結後に多くの国で徴兵制が中止され(むろん憲法の条項は残している)、国籍と忠誠との関係が不透明となっていた。ところが、最近、スウェーデンが六ヶ月の兵役を復活し、ドイツでも復活論議が起こっている。フランスでもマクロン大統領は男女共通軍事訓練の義務化(部分的な徴兵制復活)を公約に当選した。防衛政策が変わったのではない。難民問題やテロ対策に端を発した忠誠問題が理由とされる。

 とりわけ政治家にとっての国籍はその資格の根幹に関わる。最近もオーストラリアで二重国籍の国会議員がその解消手続きを怠ったために辞職している。日本でも閣僚や国会議員については、今は日本国籍の保有という条件だけでなく、法律で明確に二重国籍を禁止すべきだろう。むろん、その前に民進党が国政政党というのなら、かくも長期にわたって法律違反を続け、しかも忠誠の概念を欠く代表に先ずは退場いただくことが必要である。(日本政策研究センター所長 岡田邦宏)

〈『明日への選択』平成29年8月号〉