「思い上がり」朝日新聞の敗北

 総選挙は自民が大勝した。この選挙では朝日新聞はじめとする一部メディアは「安倍一強」が問題だと盛んに書き立て、野党もこの「一強」を倒すためということで右往左往した。

 むろん、その批判に中身が伴っていればまだよいのだが、そのポイントは、安倍首相が「国難」として提示した北朝鮮対応でもなければ、少子化問題でもなく、あのモリカケ問題でしかなかった。朝日は、首相の解散表明以降の社説や論説コラムは必ずといってよいほどこの問題を取り上げ、「『疑惑隠し解散』との批判にどう反論するのか。……説明責任に背を向ける首相の政治姿勢こそ、選挙の争点だ」(十月六日・朝日社説)と、モリカケ問題こそ選挙の争点だと主張し続けた。

 

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 モリカケ問題に対する朝日の執心ぶりを如実に物語っているのが、十月八日に日本記者クラブの党首討論だった。そのなかで安倍首相が、加計学園の獣医学部新設を巡って開かれた七月十日の閉会中審査について、朝日新聞は学部新設審査に一点の曇りもないとした八田国家戦略特区諮問会議議員や歪められた行政が正されたとした加戸前愛媛県知事の証言をまったく報じていないと発言した。それに対して朝日の坪井論説委員は「しています」と言い、安倍首相が「本当に胸をはってしているということができますか」と聞き返すと、坪井氏は「できます」と言い張った。

 朝日が閉会中審査での加戸証言を記事のなかでは一行も取り上げず、詳報という記録資料のような欄で数行とりあげただけという事実はよく知られている。にもかかわらず論説委員が「しています」と抗弁するのだから、これはもう病気と言える。

 

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 幸いにも朝日の「安倍一強」批判は実らず、有権者は明確に安倍政権を信任した。ところが、選挙翌日の社説では「(自民大勝という)選挙結果と、選挙のさなかの世論調査に表れた民意には大きなズレがある」と言い出している。安倍首相に「首相を続けてほしい」よりも「そうは思わない」の方が多く、自民党だけが強い勢力を持つのは「よくない」が七割を超えるというのが朝日の世論調査であり、選挙結果はそれと違うというのである。さらに自民党の絶対得票率はどうだ、野党が一本化していれば与野党逆転もあり得た等々、何か選挙結果が間違っていたかのような記事が続く。

 言うまでもないが、選挙の結果が憲法が定めた国民の意思、いわば民意である。朝日新聞の調査がどうであれ、選挙の洗礼を受けた国会議員が国会を構成し、そのなかから首相が選ばれる。これが憲法に明記されている、わが国の民主政治の大原則である。朝日は憲法改正を巡って「立憲主義」を言い立ててきたが、その立憲主義の大前提こそ、選挙によって表明された民意のはずである。決して朝日新聞の世論調査ではない。そもそも自社の世論調査が選挙結果よりも重要だというのであれば国会は不要と言うに等しい。思い上がりも甚だしいと言わねばなるまい。

 

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 その意味では、今度の選挙は朝日流の思い上がりが敗北した選挙ということもできよう。それでも、選挙直後の社説でさえ「憲法論議の前にまず、選ばれた議員たちがなすべきことがある。森友・加計問題をめぐる国会での真相究明である」(十月二十三日)というのだから、その執念深さには驚かされる。おそらく今のモリカケ問題が盛り上がらねば、第二第三のモリカケ問題を持ち出してくる(作り出してくる?)ことも充分に考えられる。今後の憲法論議では、改憲推進派は論議の中身を説得力あらしめるだけでなく、こうした「仕掛け」にも要注意と言えよう。(日本政策研究センター所長 岡田邦宏)

〈『明日への選択』平成29年11月号〉