「背信違約は彼らの持前」を覚悟し、「自ら実を収むる」道を考えよう

 年明け早々から「またか」と、いやな思いをした読者も多かったのではなかろうか。慰安婦問題に関する「日韓合意」に対して、韓国の文在寅大統領が「間違った結び目は解かなければならない」と発言し、日本側の自主的措置と謝罪を求めたからである。

 慰安婦問題の「最終的不可逆的」な解決を日韓双方で確認したのが「日韓合意」である。「不可逆」つまり元には戻せないという異例の言葉を入れたのは、韓国側がこれまでも慰安婦問題は解決したと言いながら、舌の根の乾かぬうちにゴールポストを動かしてきたからだが、その「最終的不可逆的」な合意でさえ、大統領自ら蒸し返そうというのだから、あきれるほかない。

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 「元慰安婦の意見が反映されていない」、だからこの合意は「間違った結び目」であると文大統領は言っている。しかし、国家間の交渉にあたって国内の意見をまとめる責任は韓国側にある。仮にそれが不十分だったとしても国家間の合意は忠実に履行する義務がある。こんな国際常識すら韓国には通じないらしい。

 しかも、合意時に生存していた元慰安婦四十七人中三十六人が拠出金を受け取ったり、受け取る意向を表明している(朝鮮日報・一月十日付)。当事者の七割以上が合意を受け入れているわけで、「元慰安婦の意見が反映されていない」は理由にはならない。ここでは詳しくは触れないが、実態は日韓合意に反対し、北朝鮮と深くつながっている挺身隊問題対策協議会(挺対協)傘下の少数の元慰安婦が反対しているという話でしかない。

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 文在寅発言は康京和外交部長官(外相)直属の日韓合意検証チームの検証結果を踏まえてのものだというが、その検証報告書によれば、日韓合意には非公開の合意があったという。外交部長官は秘密合意と批判したが、これも筋違いの批判である。

 どんな秘密交渉があったのか。報告書によれば、日本側は韓国政府が挺対協を説得すること、第三国で慰安婦像などを設置しないこと、「性奴隷」という表現を用いないことを要求し、韓国側は像の設置について関連団体の説得を約束するなど、日本側要求を事実上受け入れていたというのである。外交部長官はそんなことを秘密にしていたから問題だというが、責任は日本側にはない。この三点の要求は日本側にとって当然の要求であり、秘密にしなければならない理由はないからである。発言や報告書の詳報を読めば読むほど、腹がたって仕方がない。

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 昨年夏に渡辺利夫先生(拓殖大学学事顧問)が紹介されていた福澤諭吉の文章を思い出す。明治三十年十月、日清戦争後に実施された朝鮮の改革が無残な結果に終わったときに時事新報に書いた論説である。

 「(朝鮮は)上下一般、共に偽君子の巣窟にして、一人として信を置くに足るものなきは、我輩が年来の経験に徴するも明白なり。左れば斯る国人に対して如何なる約束を結ぶも、背信違約は彼らの持前にして毫も意に介することなし」

 福澤がこう指摘してから百二十年。彼らの「持前」は変わっていないことに驚かされるが、福澤は続けてこうも書いている。「朝鮮人を相手の約束ならば最初より無効のものと覚悟して、事実上に自ら実を収むるの外なきのみ」と。約束は無効となる覚悟をして、日本は「実」をとれ、と言うのである。

 北朝鮮の核ミサイル危機を前にして「文在寅政権は相手にせず」というわけにはいかない。ならば、日本は防衛力の大幅な増強、自衛隊明記の憲法改正による空想的平和主義からの脱却という「実」をとるべきときではあるまいか。(日本政策研究センター所長 岡田邦宏)

〈『明日への選択』平成30年2月号〉