国会は大事なことを忘れて何をしているのか

 国会は財務省の文書書き換え問題一色。大事なことを忘れて何をしているのか——こんな声をいただく。その通りで、憲法問題はむろんのこと、それ以外にも少子化問題、北朝鮮の核ミサイルに対するミサイル防衛、国際法を無視して覇権拡大をはかる中国に対する防衛策等々、大事なことはいくらもある。

 例えば、昨年暮には今国会で争点となるのではないかと予想していた問題がある。それは新年度の防衛予算に計上された空自機に搭載する長射程の巡航ミサイル(二種類。ノルウェー製と米国製)の問題である。米国製は射程九〇〇キロ、ノルウェー製では五〇〇キロ。米国製ならば日本海上空からでも北朝鮮に十分届く。それでは敵基地攻撃が可能ではないかと「専守防衛の枠を超えるというほかない」(朝日新聞)、「専守防衛の則を超える可能性は否定できない」(立憲民主党の枝野代表)との反対の声があがり、年明けの国会で大きな争点にすべきだと主張されていた。ところが、今の国会は森友問題の蒸し返し、財務省の文書書き換え問題に終始し、彼らの言う専守防衛に関わる重大事はどこかに行ってしまっている。

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 専守防衛はわが国の防衛政策の柱の一つとされているが、もともとは政治的に作られた用語で軍事的合理性に欠けている。にもかかわらず、何か国是のように主張する野党や左翼メディアがあり、今度の巡航ミサイルのように自衛隊の装備が新しくなるたびに、専守防衛に反するのではないか、と反対主張の根拠とされてきた。

 むろん巡航ミサイルについて、防衛省は「敵基地攻撃」のためではなく、あくまでも離島防衛やイージス艦防御のためだと言っている。どういうことかというと、中国軍が仮に離島に上陸した場合、敵の防空網を突破して上陸部隊を攻撃しなければならないのだが、そのためには長距離の攻撃が可能な空自の航空機が、離島に接近しなければならない。ところが、中国が持つ最新の地対空ミサイルの射程は四〇〇キロ。つまり、島に行く前に撃ち落とされかねない。当然、相手のミサイルの射程外から攻撃するスタンドオフ攻撃の能力が必要だということになる。

 それでも「海の向こうの敵基地攻撃にも使うのではないかと勘ぐられても仕方あるまい」「敵基地攻撃能力の保有に向けた大きな一歩になりかねない」と批判するメディアもある。しかし、例えばミサイル攻撃を受けた場合、その策源地を攻撃することは「自衛の範囲」というのが政府の憲法解釈である。そもそもミサイル防衛を考えた場合、ただ飛んでくるミサイルを撃ち落とすことだけがミサイル防衛ではない。「第1撃が日本に発射された後、準備中の2撃目のミサイル(日本向けであることは合理的に予測できる)を地上で破壊する『敵基地攻撃能力』は、弾道ミサイル防衛の範疇に含まれる」(織田邦男元空将)のは当たり前のことだと言えよう。

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 つまり「専守防衛」などと言うものだから、わが国の防衛政策はただただ「防衛」するだけであり、「攻撃」はそれに反するかのような誤った観念が、一般にも浸透している。侵略してきた相手に対して、ただ防御するだけではいつかはその防御が破られることは誰が考えてもわかること。それを撃退する攻撃能力を持たないというのは自衛権を放棄したようなものである。

 長距離巡航ミサイルをテーマにすれば、こんな議論ができていれば、野党や左翼メディアの防衛リテラシーのなさを明らかにするチャンスでもあったと思うと、残念で仕方がない。(日本政策研究センター所長 岡田邦宏)

〈『明日への選択』平成30年4月号〉