旬産旬消、地産地消のすすめ

旬産旬消、地産地消のすすめ

国産を積極的に食べて農業を応援しよう


 

 去る11月15日、内閣府が発表した「食料・農業・農村の役割に関する世論調査」で9割以上の人が将来の食料輸入に不安を持ち、食料自給率を高めるべきだと考えていることが分かった。特に、食料品を買う際に、国産品と輸入品のどちらを買うかという質問では、89・0%が、「国産品」と答えた(「国産品」66.4%+「どちらかというと国産品」22.6%)。

 中国製毒ギョーザ事件や汚染米事件など「食の安全」にまつわる事件が頻発したり、世界的な食糧危機の中でパンやパスタなど食料品が値上がりして家計を直撃している。そうした中で、消費者の意識が「国産」へと向かったのは、好ましい傾向である。が、しかし、毎日お店で買い物をしている感覚からすると、消費者の行動が本当にこの調査結果どおりかどうか、「ちょっと割り引いて考えないといけないのでは?」と思う。実際にお店で買うときに国産を選択する人がここまで増えているならばそれに越したことはないけれども、これはおそらく、「国産が望ましい」と考えている人が89%にまで増えた、と考えた方がいいのではないか。

 というのも、たしかに中国産食品は消費者が敬遠するようになったため余り見なくなったとはいうものの、その一方、中国産以外の輸入食材は、以前と変わらず並んでいるからだ。近所のスーパーに行ってみると、1コ98円のブロッコリーはアメリカ産、1コ88円のグレープフルーツは南アフリカ産、1切88円のサケはチリ産、10尾98円のバナメイ海老はタイ産、100グラム88円の豚肉肩ロースはカナダ産、100グラム88円の牛肉サイコロステーキ用はオーストラリア産……という具合である。これら輸入食材は、「生活・食卓応援セール」とか「円高還元セール」と銘打って売られている。もちろんニーズがあるからだ。

 こういう現実を目の当たりにすると、国民は食料輸入にはリスクがつきまとうということを理解しつつあるとはいえ、「食料輸入に依存するのはやめよう」とか「国産農産物を積極的に食べよう」という意識を持つところまでには、まだまだ至っていないのではないか、という感想を持つ。

 

◆「FOOD ACTION NIPPON」

 さて、そんな中、政府が音頭をとって、食料自給率向上に向けた国民運動「FOOD ACTION NIPPON」がスタートした(農林水産省委託事業。10月23日、同推進本部発足)。

 この運動は、世界の食糧事情や日本人の食生活の変化という状況の中で、食との関わり方をもう一度見直して貰いたいという願いから始められたもの。国民が国産農産物を積極的に食べることによって、毎年自給率を1%上げ、2015年には食料自給率を現在の40%から45%までアップさせることを目指している。また、「食料自給率を高めていくためには、国はもちろん、みんなが力を合わせることが必要です。できることから始めよう!」として、以下の5つのことを訴えている。

1、「いまが旬」の食べものを選びましょう

2、地元でとれる食材を日々の食事に活かしましょう

3、ごはんを中心に肉や油は控えめに、野菜をたっぷり使った食事を心がけましょう

4、食べ残しを減らしましょう

5、自給率向上を図るさまざまな取組みを知り、試し、応援しましょう

 この趣旨は、2005年に制定・施行された「食育基本法」などでもすでに打ち出されており、早い話、この国民運動は大人を対象とした食育プログラムがいよいよ具体的に動き出したものとも言えよう。

 生命を維持し、元気の源である「食べること」まで政府が主導して一から教えないといけないというのは何ともおかしな話だが、「食べること」を軽視し疎かにしたため、心身も家庭も社会もおかしくなっている、というのがわが国の現実である。そうである以上、国民はこの内容を「自分のこと」として、真摯に受け止める必要がある。

 

◆地元のものを買い、自分で作って食べる

 そこで、この5つの項目が出てきた背景やそれが大切な所以を、当センターなりの視点で示してみたい。

 まず一つ目の「いまが旬の食べものを選びましょう」。

 先月半ば、中国製冷凍インゲンから、基準値の3万4500倍に当たる有機リン系殺殺虫剤ジクロルボスが検出された事件が発覚したが、この冷凍インゲン事件は図らずも「旬の感覚」を忘れてしまった日本人への警告ではないかと記者は受け止めた。というのも、インゲンは本来は夏の野菜。にもかかわらず、冷凍加工食品として一年中手に入るようになった今、そのことを知っている人はほとんどいなくなったからだ。

 インゲンどころか、トマトやきゅうりでさえそうだ。友人に「トマトって、いつ獲れる野菜か知ってるか?」と聞くと、「え? 冬だったかな? 夏だったかな?」という答え。正解は「トマトは夏の野菜」だが、このように「旬の感覚」が麻痺した消費者のニーズにより、お店には一年中トマトやきゅうりが並ぶという本来は不自然な状態が当たり前になっている。

 季節外れの冷凍インゲンやトマト、きゅうりを食べなくとも、今は「実りの秋」で美味しい新米もあれば、しめじ、しいたけ、まいたけ、栗、里芋、山芋、さつまいも、じゃがいも、蓮根、ごぼう、春菊、秋刀魚、鯖、戻り鰹、いか、伊勢海老、毛がに、帆立貝……等々、わが国には実に豊かな海の幸、山の幸がある。また日本人は昔から秋には秋のもの、春には春のものをと旬の味を楽しみにし、堪能してきた。この「味覚の秋」に、冷凍食品を食べるなんて無粋の極み。事件を契機として、旬の国産野菜や魚介類を買って食べて、「食欲の秋」を満喫してほしい。

 二つ目の「地元でとれる食材を日々の食事に活かしましょう」は、いわゆる地産地消のこと。つまり、遠く離れた外国や遠い県から来るものではなく、近くで収穫されたものを買って食べようということだ。

 収穫された農産物を外国や遠い県から運ぶには、船や長距離トラックなどを使う。そうすればCO2の排出量が増えるし、農畜産物を生産するために使われた他国の大量の水を間接的に奪うことになる。また輸入食材の場合は、防腐剤、酸化防止剤、殺菌剤、防かび剤などの薬品が使われているが、なかにはポストハーベストなど人体への影響が懸念されている薬品もある。そうした問題から離れるためにも、昔のように地元で獲れたものを買って食べるというシンプルな在り方が望ましいということだ。

 さらに一番大事なのは、地産地消は国内農業を支えることになるということ。外国のものを買えば、それだけ日本の農家が疲弊する。農家が疲弊すれば、日本の山村は崩壊し、美しい景観も生態系も、つまりは国土が崩壊する。そんな荒れた環境の中でまともな人間が育つはずがない。逆に、地域で獲れたものを買って農家を応援すれば、農業の再生へとつながり、安全・安心な食材が手に入り、国土が保全されるという良い循環が生まれる。

 記者は「食料自給率アップ=地元のものを買い、自分で作って食べること」と理解しているが、地産地消を実践してほしい。

 

◆感謝の念なくして自給率は高まらない

 三つ目の「ごはんを中心に肉や油は控えめに、野菜をたっぷり使った食事を心がけましょう」とは、「日本型食生活」を実践するということ。

 食生活が洋風化し、パン食・肉食が増え、ハンバーグ、ラーメン、スパゲティなど油を使う食事が増えた結果、糖尿病やアトピー性皮膚炎など様々な現代病にかかる人が増え、国民医療費はいまや33兆円を超えている。かつて米国でも同様のことが起こり国家的な問題となったが、問題を解決する上で理想的な食事とされたのが、米を中心として野菜、魚など多彩な副食から構成され栄養バランスに優れた「日本型食生活」だった。これを踏まえて当センターは「毎日ごはんをもう一杯」「一日一回週六日の和食」を推奨しているが、健康のためにも自給率向上のためにも、「日本型食生活」を取り戻すことは何よりも肝要だ。

 四つ目の「食べ残しを減らしましょう」は深刻に受け止めて貰いたい問題だ。

 農林水産省によると、現在わが国は約1900万トンの食品廃棄物を発生させている。具体的にはスーパーやコンビニなどで売っている賞味期限切れの食べ物、家庭・学校給食・観光地の残飯、過剰農産物などだが、1900万トンという量は世界の食料援助量(約600万トン)の約三倍に相当する。

 一方、世界では途上国を中心に約8億5千万人(うち3億5千万人が子供)が栄養不足の状態にあり、毎日約2万4千人が餓死している。その中でわが国は食料の6割を海外から輸入し、それをムダに捨てている。こんな罰当たりなことがあろうか。

 子供のころ、親から「食べ物を粗末にすると目が潰れる」とか「罰が当たる」と教えられたものだが、今はそうしたことが教えられないのだろうか。少なくとも、これだけ食べ物を粗末にしながら「食の安全」を求めて大騒ぎするのは、正気の沙汰とは思えない。われわれ人間は動植物など生きているものを食べて生命をつないでいる。そうした生命への畏敬・感謝の念を忘れてはならない。

 最後の「自給率向上を図るさまざまな取組みを知り、試し、応援しましょう」とは、米粉を使ったパン・パスタなどの新メニュー、国産飼料米で育てた牛や豚、地産地消ブランド、直接契約による生産など、自給率向上に向けた動きを知って応援することだが、まずは積極的に関心を寄せてほしい。

 兎にも角にも、こうした運動が起こるのも、日本の農業が崖っぷちにあるからだと言える。農業をたてなおすには、国民の応援が不可欠だ。応援とは、国産を望むだけでなく、実際に買って食べることである。いかに多くの人々が国産を望むようになったとしても、実際に買って食べる人が増えなければ、自給率は上がらないからだ。いまは、「なんとなく国産がいい」という段階から、「国産を積極的に買って食べる」という段階にまで進むことが大事だろう。日本で穫れた米や野菜をいっぱい食べて、農業を応援しよう。