「魚食スペシャリスト検定」とは?

 『明日への選択』(平成21年1月号)のインタビューに登場いただいた生田與克さん(築地魚河岸マグロ仲卸業「鈴与」3代目)の話の最後に、「魚食スペシャリスト検定」というのがあった。

 同検定を創設した国際魚食研究所によると、魚食スペシャリストとは、魚に関する幅広い知識と経験を持ち、魚料理、文化、歴史、健康、漁法、環境、流通、販売、資源管理まで、トータルにアドバイスできる「魚食の専門家」で、同検定は「日本の伝統的な食文化を継承し、未来に伝える初めての資格」。

 去る十一月二十三日、初めての検定試験(3級)が都内二カ所で開かれ、二百四十六人が受験した。同研究所の所長も務める生田さんは、「検定を始めるということを告知して以来、『こういうのを待っていた』と知らない人達からひっきりなしに激励の電話をもらった。予想以上に多くの方に受験していただいたが、六割は一般の方々で、大変感激している。今後は一千人をめざして頑張りたい」と話している。

 

◆サバの正しい食べ方

 実際に試験に出た問題と解答をいくつか紹介しよう。まず、われわれの食生活にもすぐに役立つ身近なものから。

 サバの特性に合った食べ方について、次のうちから、適切ではないものを選びなさい。

  A 鮮度落ちが早く、ヒスタミン物質が含まれるので、生食には注意が必要

  B 秋サバとしておいしいのはマサバで、夏にはゴマサバのほうがおいしいといわれる

  C みそと相性が良く、みそ煮はサバの代表的な食べ方である

  D 卵は加工して「カラスミ」の原料となるので大事にする

 正答はD。カラスミはボラやサワラの卵巣を塩漬けし、乾燥させたもので、サバとは関係ない。検定の公式テキスト『魚食スペシャリスト検定3級に面白いほど受かる本』(中経出版)によると、夏に産卵するサバは、秋に太り、脂がのって旨くなる。マサバは特にその傾向があるが、ゴマサバは年間通して味はほぼ変わらない。ただ、サバは鮮度落ちが早く刺身だけはダメ。みそ煮は他の魚では余りやらないが、サバは相性がいいという。

 

◆魚がいなくなる?

 魚食スペシャリストは、魚の特徴や食べ方に詳しい単なる「魚博士」ではなく、水産業全体についてトータルな知見が求められる。それゆえ試験ではこんな問題も。

 FAO(国際連合食糧農業機関)の『世界漁業・養殖白書2006』によると、現在、世界の魚介類の25%が『過剰利用されているか、枯渇している』状態にあり、さらに52%が、すでに『限界まで利用』されていて過剰利用の一歩手前にあるといいます。これは何を意味していますか。次のうちから、適切なものを選びなさい。  

 A 世界の魚介類の77%は、安定的に供給されている

 B 世界の魚介類の77%は、海から消えてしまった

 C 世界の魚介類の77%は、資源の危機にひんしている

 D 世界の魚介類の77%は、食べてもさしつかえない

 正答はC。最近わが国でも「マグロが食べられなくなる」と騒がれることがあるが、現在世界の魚が枯渇の危機に瀕し、今世紀半ばには海から魚がいなくなると警告する学者もいる。この問題はそうした水産資源の現状を正しく把握しているかを問うているわけだ。

 

◆「えびす」の心とは

 日本の魚食文化に関する問題も多数あるが、スペシャリストでなくとも知っておかなければならないこんな問題も。

 日本の漁業に古くから伝わる『えびす』とは、何をさすものでしょうか。次のうちから、適切ではないものを選びなさい。

 A かつての日本の漁業は、「えびす」である海の幸をじっと待ち、とれたものをありがたくいただくものだった

 B 肉や皮、脂からヒゲにいたるまで利用価値が高く、カツオやイワシなどを沿岸に追いこんでくれるクジラを「えびす」と呼ぶ地方もあった

 C 魚がたくさんとれた日は、漁師はみなニコニコと「えびす顔」になることから、明日も頑張って漁をしよう、という意味の合言葉だった

 D 「えびす」とは七福神の恵比寿様で、商家における生業の神であるが、魚とつり具を抱えた姿は海の恵みの象徴でもあった

 正答はC。A、B、Dにもうかがえるように、日本の漁師の間では、海の拾い物を「寄りもの」と喜び、幸運をもたらす「えびす」であると信じられてきた。いまや日本の消費者は、「安いから」と輸入物のマグロ、サケ、エビばかりを求めるけれども、その陰でマイナーな魚が捨てられている。「えびす」の心は、われわれ消費者にこそ必要だ。

 ※魚食スペシャリスト検定は、毎年5月、11月の年2回実施。興味のある方は、ぜひ挑戦して下さい。→詳しくはこちら

〈『明日への選択』平成21年1月号〉