夫婦別姓は戸籍制度解体への一里塚

 選択的夫婦別姓制度の導入を柱とする民法改正案(以下、別姓法案)が今通常国会に提出される可能性が強まってきた。千葉景子法相は就任以来、今国会に別姓法案を提出する強い意向を示してきたが、年が明けて、法務省が今国会に別姓法案を提出予定であることが判明、そして去る二月十九日の法務省政策会議には別姓法案の概要が示された。

 しかし別姓法案には、「通称使用派」も加えると国民の六割以上が反対している事実を忘れてはならない(平成十八年の内閣府調査)。何より夫婦別姓は親子別姓でもある。児童虐待の激増が雄弁に物語るように、今でさえおかしくなっているわが国の親子関係がますます脆弱になるのではないかとの懸念は大きい。また、欧米キリスト教国とは異なり、もともと夫婦の関係性が脆弱な日本では、「別姓が導入されれば、夫婦の紐帯がますます細くなってしまう」(宮崎哲弥氏)との懸念もある。

 さらに記者が危惧しているのは、民主党政権下での別姓導入が引き起こしかねない新たな問題だ。結論から言えば、別姓導入が戸籍制度解体への一里塚となる可能性である。

 日常生活で余り意識されることはないが、日本の社会で家族という共同体とその絆を縁の下の力持ちのように支えているのが戸籍である。戸籍は、国民の出生・結婚・死亡などの身分の変動を「夫婦と未婚の子」を単位として登録するシステムである。後ほど詳しく述べるつもりだが、戸籍制度は結婚や相続など家族生活を営む上で極めて重要な役割を担うと同時に、実は家族の一体感を維持する機能も有している。

 ところが、別姓推進派の中には、別姓導入を戸籍制度改廃への一里塚だとする考え方が根強く存在する。そうした人々は、今の戸籍制度が家族単位である点を戦前の家制度の残滓と捉え、戸籍を個人単位の「個籍」や、欧米諸国を模した個人登録制に改めることを求めている。この意味では、別姓導入によって「家族の絆」が弱まる恐れがあるだけではなく、別姓導入は初めから家族制度の解体を意図した策動とも言えるのだ。

 むろん、別姓導入と戸籍制度の改廃をリンクさせようとする考え方は確かに以前からあった。しかし自民党政権の当時は、そうした過激な考え方が現実の政治的テーマとなる可能性は低かった。ところが、民主党政権の誕生によって、状況はガラッと変わった。以下、そうした新たな問題状況をレポートしたい。(日本政策研究センター研究部長 小坂実)

【本稿の主な内容】

・国会提出強まる夫婦別姓法案

・勢いづく戸籍解体勢力

・福島・千葉氏の戸籍制度への「敵意」

・「世界に冠たる」日本の戸籍制度

・新たに発足した民主党・戸籍法議連

〈『明日への選択』平成22年3月号〉