子供は家庭で育てると損?

子供は家庭で育てると損?

ゼロ歳児保育で公費補助月額六十万円の異常


 

 一月二十三日の読売新聞の「論点」という欄に「公費支援を在宅育児にも」という青葉ひかる(社会評論家)という人の寄稿が掲載された。政府は保育所への待機児童ゼロ作戦、つまり働く女性がどんな時でも子どもを預けられるようにということで、やっきになって保育所を拡充しようとしているが、この寄稿はそうした制度では保育所に預ける場合にだけ公費の支援があるということになるが、「家庭で子供を育てたい」という母親にも補助金を出すべきで、それが少子化対策にもなるし、子供の幸せにもつながるという趣旨で書かれている。もっともな話だが、このなかで保育所への補助について驚くべき数字が出てくる。

 「東京都品川区を例に挙げると、保育園で預かる子供一人あたり国と地方公共団体の負担額(公費)は、公立も私立も一か月約二十万である。ゼロ歳児では、なんと一か月約六十万円である。他の地域も全国的にもほぼ同様である」と。

 

◆五十三倍お得?

 ゼロ歳児の場合で公費補助が月六十万円と聞いて本当かと疑う向きもあろうが、これが現実である。品川区の詳細がわからないため、ここではデータが公表されている東京都足立区のケースを紹介しよう。

 足立区の場合、保育園にかかる経費は、ゼロ歳児の場合で月平均約四十一万円。一歳児が約二十万円、二歳児で約十八万円となっている。品川区に比べて少ないとは言え、それでも大変な額である。月に四十一万といわなくても、その半分でも直接もらえるなら自分で子育てしますという母親も多いだろう。

 むろん、保育園でも利用者は保育料を払っているのだが、利用者負担額は保育園の運営費のたった九・二%。というのも、実際は所得によって免除されているケースが大半だからである。

 また、足立区のデータには、両親と三歳と一歳の二人の子供がいるケースで、同じ収入(年収三百六十万円)なら子供二人を保育園に入れた場合と在宅保育した場合、どれほど公費補助が違うのかという試算も紹介されている。それによると、二人とも家庭で育てた場合の年間補助が十二万円(児童手当のみ)に対して、二人の子供を保育園に入れた場合はその約三十三倍の年間約四百万円。むろん、このうち一人がゼロ歳児だった場合は、先の資料から計算すると、六百四十万円にはねあがる。そうなると、家庭で育てた場合の五十三倍ということになる。

 

◆八割が保育園経費

 なんとも驚く数字だが、こうした保育園向けの公費補助は区全体でどの程度になるのかというと、足立区では約百三十五億円。幼稚園や在宅保育、学童保育を含めた全体の公的経費が約百六十四億円。つまり、保育園経費だけで全体の八割以上を占めている。

 一方、保育園を利用している子供はどの程度いるのかというと、足立区の就学前児童は全部で約二万五千人弱。そのうち四二%が在宅の子供、幼稚園に通っている子供が三一%。つまり、保育園を利用している子供は、全体の二七%しかいない。つまり、全体の約四分の一強の子供のために、経費の約八割が使われているということになる。

 金額の面だけで言えば、これでは単に子供は家庭で育てては損だと露骨に誘導しているのと同じではないか。

 

◆「多様な保育サービス」に五千億

 むろん、この金額全体を地元自治体が負担しているわけではない。保育園補助費は、国が半分、都道府県が四分の一、残り四分の一が地元自治体の負担となっている。では、国全体ではどうなっているのかというと、新年度の予算では、約五千億円が厚生労働省の予算として計上されている。

 厚労省は「多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実」であり、「多様な保育サービスの推進」予算だと言っている。むろん、「男女共同参画関係予算」である。こうしてみれば、五千億の国費を投入して子供を家庭から引き離そうとしているということと同じではないか、とも言えそうだ。(『明日への選択』編集長 岡田邦宏)

〈情報ネットワーク/『明日への選択』平成16年3月号〉