移民「統合」は不可能だ

続・日本を「移民国家」にしてもよいのか

移民「統合」は不可能だ

移民問題を抱え込んでしまったヨーロッパ諸国は今や「統合」へと大きく政策転換しつつある。しかし果たして「統合」は可能なのか。


 

 中川秀直元自民党幹事長が主張する「一千万人移民」論に触発され、先月号で英・仏・独の現状を紹介した。それを簡単に言えば、戦後、これらの国は経済成長のために低賃金の外国人労働者を大量に導入した。その後、経済が停滞し移民の受け入れを中止したが、外国人労働者は帰国せず、逆に定住化し、今では「移民国家」となっている。しかも、外国人移民が原因となった犯罪、暴動が頻発したり、また失業対策、教育格差など様々な社会的コストの増加にも悩まされている――ということになる。

 とはいえ、これらの国々も、最近では惨憺たる現状に直面して外国人労働者・移民政策を大きく変更している。従来の移民・外国人政策を支えてきたのは、人種や民族が多様であることを価値とし、一つの国のなかでマイノリティである外国人組織などを支援する多文化主義政策とも言えるものだった。ところが、最近では、そうした多文化主義は転換を迫られ、逆に移民の制限とともに、統合・同化が政策の主流になりつつある。さらに、統合を論じる際、統合の核となるものは何か、例えば、イギリス的価値とは何かというアイデンティティに深く関わる問題も提起され始めている。

 そこで、今月はこうしたヨーロッパでの最近の議論をフォローしつつ、移民問題が抱える本質的問題を考えてみたい。

【本論文の主な内容】
・多文化主義からの転換
・義務化された「統合」
・誰がコストを払うのか
・日本のアイデンティティは?
・途上国から人材を奪うのか?

〈『明日への選択』平成20年8月号〉