外国人地方参政権と在日帰化問題・憂慮すべき「現実」は何か

外国人地方参政権と在日帰化問題

憂慮すべき「現実」は何か


 

 永住外国人の地方参政権問題は一時下火になっていたが、来日した李明博・韓国大統領が日韓会談でこの問題を持ち出し、再び政治のテーブルにのぼりそうな気配も出てきた。

 これまで、参政権付与推進論は、外国人の「住民」としての権利や納税の義務を果たしていることなどを理由にしてきたが、最近ではこれらの推進論に対して参政権は国民固有の権利であることなど、多くの説得力ある反対論が出されている。

 一方、この外国人参政権問題は、在日の帰化を巡る論議にも広がり始めている。特別永住者である「在日」は何世代も日本を生活の本拠とし、日本語を母語とし、教育や日常生活などは日本人と変わるところがないにもかかわらず国籍だけが違うというところに問題の核心があるとの指摘は、これまでも鄭大均氏(首都大学東京教授)などから出されていた。こうした捉え方に立てば、地方参政権付与はアイデンティティと国籍のズレを固定化するだけであり、問題を解決するには在日の帰化を促進するほかないということになる。

 この三月に公表された国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)の提言は、「参政権行使は国籍取得が条件」としたうえで、「特別永住者には特例帰化制度導入を」と提唱している。また、この提言とはスタンスはかなり違うが、自民党の中にも特別永住者の日本国籍取得手続きを簡素化する「特別永住者国籍取得特例法案」を議員立法として国会提出しようとする動きもある。これに対して、外国人地方参政権にはもちろん反対だが、忠誠の対象を外国に持つ日本人を作ることになるなどの理由から、特例帰化への反対論も主張されている。

 確かに、帰化すれば、外国籍のままで「国民固有の権利」である参政権を取得するという矛盾はなくなる。他方、国籍の取得を、ビンのラベルを張り替えるように捉える議論は納得がいかないという声があるのも事実である。

 そこで本稿では、わが国の帰化を巡る問題点や国籍の意味など、議論の前提となる事実を提示したうえで、今日の外国人参政権問題を念頭におきつつ、「特別永住者」である「在日」の処遇について検討してみたい。

【本論文の主な内容】
・現行帰化制度は問題あり
・国語能力は不要か
・国籍取得と「忠誠義務」は一体
・政策として特例帰化制度を
・憂慮すべき現実は何か

〈『明日への選択』平成20年5月号〉