食料自給率40%の愚かな現実

食料自給率40%の愚かな現実

日本人が食べないサケで中国が儲けている


 

 食をめぐる問題で、どうしても紹介しておきたい話がある。それはサケ(鮭)についての話だ。

 現在、サケ・マス類の国内生産高は24万6000トン、輸入高は20万400トンでほぼ拮抗しているが、スーパーで売っている切り身や、コンビニ弁当・おにぎりの食材として使われているサケは、ほとんどがチリ産だ。

 これらは海で泳いでいるのを捕まえたのではなく、生け簀で育てた養殖もの。せまい生け簀の中で大量のサケがひしめき合っているため、一匹が病気になればたちまち伝染して全滅の恐れがある。そこで、病気にならないようエサに大量の抗生物質を入れることになる。

 抗生物質は感染症の原因になる細菌を殺す薬で有用なものではあるが、副作用も多く、下痢やアレルギー反応を起こすしやすい。それが入ったエサを毎日食べて育ったサケをいま日本人の多くが食べているのだ。長い目で見れば、これは非常に恐いことではないのか。

 健康面の問題だけではない。小泉武夫東京農業大学教授によると、日本のサケは世界一おいしく安全であるにもかかわらず、日本人が国産のサケをあまり食べなくなったために、根室や釧路などのサケ業者は、今どんどん廃業しているという。そればかりか、こんなとんでもない事態にもなっている(『いのちをはぐくむ農と食』より)。

 「この状況を見て、中国の船がいま根室、釧路あたりへ来て、日本人が食べない世界一安心・安全でおいしいサケを、売れなくて余っているのだから、格安で買っていきます。そして中国では、それを原料にしておいしいサケ缶をつくり、『メイド・イン・チャイナの世界一おいしいサケ缶』だといって、ヨーロッパやアメリカに輸出したりしているということです」

 いったいぜんたい、こんなバカな話があるか。小泉教授は続ける。

 「安心・安全でおいしい、日本人のためのサケは、日本人が食べないので中国にいってしまいます。逆に日本人は、安全面やおいしさの点で大丈夫かなというサケを、安いという理由だけで買って食べているのです。日本人はこういう情けない民族になったということを現実としてとらえて、自分たちとしてどうすればいいのかを考えなくてはいけません」

 八〇年代後半ぐらいからだろうか、われわれは「安いから」といって輸入食材を買うようになり、「楽だから」といって外食・中食に頼って自分の食事を作ることすら面倒臭がるようになった。その結果、前に紹介したように、カラスでさえ食べない物を食べ、身体に毒物を蓄積し、同胞である日本人の水産業者を次々と廃業に追い込み、わが国に災厄をもたらし続ける中国を利するような愚かなことをやっている。