「都市から地方へ」本格的な政策転換を

「都市から地方へ」本格的な政策転換を

政府の投資によって新規の雇用を創出し、地方を活気づけ、水田や森林の再生に役立てる「緑の公共事業」を始めよう。


 

 世界的な景気減速の中で、日本経済も急降下し始めた。先日発表された十一月の経済指標は軒並み記録的な悪化を示している。

 中でも落ち込みが際立つのが自動車だ。新車販売台数は九月が前年同月比五%減だったのが、十月は一三%減。そして十一月は二七%減だという。また、その煽りを受けて工作機械の十一月の受注額はやはり前年同月比で六二%減。単月としては過去最大の下げ幅だとされる。

 むろん、これに鉄鋼、電機が続く。鉄鋼は自動車や建築の不振で、この八月の受注は二年四ヶ月ぶりにマイナスに転換。更に十月は一五%減と急落した。電機各社も一ドル=九〇円を割り込む円高も重しとなって軒並み売り上げを減らし、収益を急速に悪化させている。その結果、各社はまさに競うように減産、設備投資抑制、雇用調整へと動き、非正規雇用や派遣を中心に過酷な人員削減が加速されているのが現状だ。

 さて、そんな中、このような輸出型企業にこれまで引っ張られてきた日本経済の「内需型」への転換を促す声が一方では高まりを見せつつある。直面する問題が単なる金融危機を超えた世界的規模での需要減退・市場縮小であるだけに、これからは国内の需要に活路を見いだしていくしか本格的再生の道はないというわけだ。輸出の前に立ちはだかる壁はまさに「構造的」なものというのが現実で、早急の世界景気の回復は願望としてはともかく、もはやそれは容易には成り立ちがたい流れ、というのが衆目の一致するところであるからだ。そうした論者の一人、伊藤元重氏は次のようにいう。

 「この景気減速のなかで日本が取り組むべき大きな政策課題は、中長期的にいかに(国内で)需要を創り出していくのかということだ。……内需を創り出さないかぎり、日本はじり貧になってしまう。しかし、持続的に内需が生まれるようにするためには、一時しのぎの政策ではなく、日本経済の構造を変えるような本格的な政策転換が必要である」

 ちなみにいっておけば、ここで伊藤氏がいうのは、単なる「輸出から内需」への通り一遍の転換ではない。むしろその前提としての、これまでのような一時しのぎの政策とは異なる、「持続的な内需」の創造に向けた「中長期の戦略」の必要だといえる。そのためにこそ「日本経済の構造を変えるような本格的な政策転換」が必要だというのだ。

 周知のように、麻生内閣は発足以来、矢継ぎ早の緊急経済対策を打ち出してきた。しかし、二兆円の定額給付金をめぐるあのゴタゴタ劇に象徴的に見られるように、そこに確固たる明日の日本経済に向けた「中長期の戦略」があったかと問われれば、必ずしもそうではないというのが偽らざる現実でもあった。今は当面の景気対策というのが首相の真意であったとしても、これまでの政策では余りにも目先の対応に過ぎ、一貫した将来展望に欠けるというのが大方の評価でもあったからだ。その意味で、今こそ日本経済の「中長期の戦略」をめぐる国民レベルでの議論が求められるのではないか。

 ところで、こうした日本経済の「中長期の戦略」を論じようとする時、まず何よりも第一次産業の再生がカギになる、と考えるのが筆者の認識である。世界経済が今、地球環境の保全へ向け大きく舵を切りつつある現状については繰り返し指摘されているが、そうした時代の流れを前提においた場合、まさにこれからの経済のカギはそうした地球環境と一体の関係に立つ、農業・林業を中心とした第一次産業にあると見るべきであり、そうした基本的な認識がまず何よりも不可欠――というのが筆者の認識であるからだ。……二酸化炭素吸収源としての森林の活性化、風力・バイオマス・小水力といったクリーン・エネルギーへの転換、脱石油の新素材・新製品の開発、フードマイルズの削減をめざした食料・飼料の自給化、農業の脱石油化、自然豊かな田園都市の創造と都市緑化の推進、そして何よりも巨大・集中の過密化した都市から自立・分散の地方への人口移動……等々、こうした地球環境時代に求められる新たな課題についていえば、それはまさに農業・林業の役割を抜きにしてはあり得ない政策課題だというべきだからだ。

 と同時に、筆者はここに将来の雇用吸収源もまた思い描いている。現在わが国では輸出企業での急激な雇用調整が問題になっているが、筆者は今後……(日本政策研究センター代表  伊藤哲夫)

〈『明日への選択』平成21年1月号より抜粋〉

【本稿の主な内容】

・求められる「持続的な内需」の創造

・第一次産業の再生がカギに

・「緑の公共事業」を開始せよ

・農林業を「第六次産業」に

・地方への若者の流れをつくれ

  (続きは、『明日への選択』平成21年1月号で読めます)