食育・食の崩壊と家庭④ 少年犯罪とキレる食事

 「いま少年鑑別所にいる神戸の連続児童殺傷事件を起こしたA少年は、清涼飲料水やスナック類が好きみたいで、よく差し入れしてもらってるんです。……彼の食生活は彼の犯罪と何か関係があると思うのですが」

 これは「料理の鉄人」の解説でもおなじみの服部幸應さんが、警察での講演後、鑑識官から受けた質問だ。記者はかねて、服部さんの「キレる子どもは食事に原因がある」という持論に注目していたが、最近『論座』の連載で端的にそれを語っていたので紹介したい(六月号)。

 
◆キレないほうがおかしい子供の食生活

 服部さんはまず神戸の事件以来、世間で展開されてきた、受験競走のプレッシャー、少子化でコミュニケーションが苦手になりいつもイライラしている――こういった「少年少女がキレる原因」論議に対して、「一日三度、きちんとした食事をしていれば、この程度の心の問題ならたいていの子どもが乗り越えられるはずなのにそれができていないのではないか」と疑問を投げかける。

 「たとえば、小学五、六年生は夏休み中、一日平均で清涼飲料水二百五十ミリリットル缶四・七本も飲んでいた。そのほかアイスクリームを平均二個、板チョコ一枚、スナック菓子にケーキ二・二個も食べ、これらに含まれる砂糖の摂取量は一日二百五十グラム以上になった。コーヒーショップに置いてあるスティック状の砂糖に換算すると、じつに八十本分にもなる。一日三十から四十グラムが適量なのに、これでは糖分の摂り過ぎである。
 その半面、ビタミンB群、亜鉛とカルシウムは極端に不足していた。スナック類とか加工食品ばかり食べているせいで添加物のリン酸塩を過剰摂取していて、カルシウムの吸収を阻害しているからだ。
 本来、健康な人なら血液中のカルシウムとリンの割合は一対二ぐらいだが、キレやすい子を調べてみると、カルシウム一に対してリン四十という異常なバランスを示したという報告もある。……こんな食生活、栄養状態では、子どもはキレないほうがおかしい。親がきちんと指導し、しつけをしなければならないのに、子どもとの接点が少なくなっている……そんな『孤食』の子どもはいつどこでキレても不思議ではない」

 
◆家族で食事をする重要性

 こう指摘した上で、服部さんは家族で食事をすることの重要性を次のように力説している。

 「たとえば子どもが父親の飲んでいるビールの味を知りたくなって一口せがみ、こんな苦い飲み物がよく飲めるなあと、父親を少し偉く感じるときだってある。飯粒を残すと、母親から『ひと粒だって残しちゃダメよ、お百姓さんが一生懸命作ってくれたんだから』云々と、コメのうんちくまで聞かされたりする。
 子どもは、そういうふうに食べ、空腹を満たしていくうちに穏やかな気分になり、同時に大人の感覚とか、農民が田んぼで働く姿とか、見えない何か、別のだれかへの想像力も育んでいく。自分の体にだけではなく、頭と心にも栄養をつけていく。
 『孤食』の食卓では、子どもはこんな経験はできない。たとえ食卓はあっても母親が加工食品をチンするだけのおざなりな料理しかださないなら、食べ物がどこから来てどのように作られるのか、子どもの想像力は食品工場に飛ぶことはあっても、田んぼや畑や大自然へ飛びはしないだろう。それは子どもにとって、ちゃんと食べていないのと同じことなのだ。
 核家族化が進み、家庭でさまざまな伝承が途切れつつある今、食卓も失われ、親は子どもに身をもって食というものを教えることを放棄している。私にはそれが残念で、はがゆくて、気がかりでならない」

〈『明日への選択』平成12年6月号〉