食育・食の崩壊と家庭⑩ 「払わない」恥を知れ

 牛肉輸入再開が大筋で決まったようだが、食肉以前の「食育」で、まだこの国は揺れている。

 日本人、特に児童が朝食を抜く傾向にあることは、もう随分前から言われていることではあるが、最近では、その朝食を補う食べ物を出す学校が出てきている。

 東京足立区の小学校では、昨年まで保健室に小さなスティックシュガーを常備し、何人かの欠(朝)食児童が、授業中にやってきては水と一緒に砂糖を飲み込んでいたというし、岡山県美咲町の小中学校八校では、昼の給食とは別に乳製品の提供を始め、登校時や一時間目の後、ヨーグルトやチーズなど十種類が自由に飲食できるようになっているという(読売新聞六月二十日)。

 つまり、家で朝食を食べてこない子供、或いは、食べてもパンやおにぎりだけ、というような子供のために、学校の方が親に代わって面倒を見ているわけである。

 当然、これについては保護者の方からも「朝食は親の責任だ」「なぜそこまで学校がするのか」という反発があるわけだが、実はそれ以上に、「親の責任はどうなってるのか」と問いたくなる、もっとひどい事例がある。それが今や全国的な規模で問題となっている給食費滞納問題である。

 たとえば、五月末には、北海道根室市で市の学校給食協会が、支払い能力があるのに給食費を長期滞納している世帯に対し、支払いを求める民事訴訟を全国で初めて起こす方針を固めたという報道があった。実際、各地の小中学校では給食費の滞納が増加傾向を強めており、中には、給食費支払いの民事の時効が二年と知った上で納付を延ばす親もいるらしい。つまり確信犯である。

 さらに驚くべきことに、五月十五日の中国新聞の記事によれば、そういう滞納家庭への学校側の督促に対し、「義務教育なので、支払う必要はない」「ローンがあり、給食費にまで回らない」と広言する保護者が増えているという。中には、給食費を滞納する一方で、「愛犬の美容代を惜しまず、新車を購入していた家庭もあった」「差し押さえが職場に知れると分かると、すぐ支払った」という輩もいたというから驚く。

 同じく中国新聞の報道によれば、呉市のある学校では給食費滞納の分を食材の節約などで対応していたというが、不払いの家庭のせいで、きちっと払っている側の給食のメニューが貧相になってはたまったものではない。

 先日見たテレビのインタビューでも、こうしたバカ親たちの答えていたのは、「義務教育なんだから、タダで食わせろ」「払わなくたって、学校辞めさせられることはない」「携帯代は出せても、給食費は払う気無い」「NHKの受信料と同じ」……まったく、はぁ?としか言いようがない。一体、このバカ親たちの金銭感覚はどうなっているのか。こんな親たちに育てられて子供はどう育つのか。

 この度のワールドカップでも、クロアチア戦では定価の三十倍もの金を出してチケットを買う日本人がいて、「豊かな国の日本が相手でよかった」と売ったクロアチア人に変な喜ばれ方をしたらしい。今回の日本チームは別名サムライジャパンだという。が、サムライの心とはまさに「武士は食わねど高楊枝」。例えボロを着てでも、子供の事で人様に世話になるようなことはしないという誇りではないか。

 サッカーで勝った、負けたと大騒ぎし、弱いくせに応援だけ強国の真似をするのもいいだろう。しかし、何より基本的なところで日本は世界に対して、これがサムライの国だと言えるのか。恥ずかしい国民に成り下がってはいないか。見直さなければならないのはジーコジャパンの戦い方ばかりではないはずだ。

〈『明日への選択』平成18年7月号〉