度を超した米国メディアの日本叩き

 「従軍慰安婦は、数千人の女性を奴隷にした日本特有の制度に対する婉曲表現であり、その女性たちの多くは韓国人であり、軍の基地に移送され、日常的に日本兵に強姦されるために、強制的に性行動に従事させられた。多くの場合、奴隷状態は数年間続き、多くの女性たちが命を落とした」

 ここに紹介したのは、二月十二日付ワシントン・ポスト紙の社説の一節である。「慰安婦はどこの国の軍隊にもいた」としたNHK籾井会長の慰安婦に関わる発言に対し、こう批判しているのである。とはいえ、いかに当時の詳細な事情に通じない米国新聞だからとて、このようなデタラメきわまる主張がまかり通ったのでは、米国のメディアはいつから中韓のプロパガンダと同じになったのか、という話にすらなろう。

  最近、米メディアでは安倍首相の歴史認識への懸念が高まっているという。「東アジアの安全保障で、問題なのは日本」「国家主義の安倍首相は信頼できるのか」などといった記事が相次いでいるというのだ。しかし、このような馬鹿げた認識を前提に、安倍首相はなぜこのような籾井会長のような発言をきっぱりと否定できないのかなどと批判されても、そもそも批判自体がお粗末すぎて、否定のしようもないというしかない。

  筆者がまだ学生だった頃の話だが、初めてポツダム宣言の実物を読み、そこに「日本国国民を欺瞞し之をして世界征服の挙に出づるの過誤を犯さしめたる者」とあるのに驚いた記憶がある。いくら敵国とはいえ、「世界征服」はちょっと大袈裟すぎはしないか、と思ったからだ。いかに戦争中とはいえ、これでは日本はヒトラーと同類ではないか、と思ったのだ。

 ところが、時を経て、このポツダム宣言の起草者が、本当に日本が「世界征服」を企んでいたと信じていたらしいと知らされ、仰天した。その背景に中国が反日プロパガンダとして世界にばらまいた田中上奏文、つまり田中義一首相が「世界を征服せんと欲せば、まず支那を征服せざるべからず」と上奏したとされる偽文書を本物と信じた彼らの誤解があり、それがこの「世界征服」という言葉になったと知らされたからだ。つまり「世界征服」と書いたのは本気で、そう考えれば東京裁判で検察側がまずこれを持ち出してきたのも説明がつく、というのだ。

  つまり、事情のわかる者なら即座に一笑に付すような話がそのまままかり通ってしまった、という話なのである。こんな田中上奏文のようなものを本物と考える日本人など当時どこにもいなかった。しかし、これがいつの間にか世界に流布され、とりわけ米国ではエドガー・スノーが大々的に宣伝したこともあり、反日世論の形成に決定的な影響を及ぼしたという。

  そう考えれば、このワシントンポストのようなデタラメ主張も、単に「馬鹿げたこと」と笑っておくわけにもいかない。われわれにできることは限られているが、せめて心ある者の総力を挙げて、その余りの荒唐無稽ぶりを指摘していく必要があると考えるのだ。これは最低限の事実確認すらできていないトンデモ記事なのだ、と。

 同じ社説で、彼らは籾井会長の発言を論じ、NHKの「独立性と専門性」が政府の圧力により、今後損なわれていく可能性にも言及している。しかし、ご心配は無用。「独立性と専門性」をいうのなら、まず自らの報道姿勢を問うてみるべきではないか。自らは正論のつもりかも知れないが、その認識はデマゴギーへの依存と、素人的な思い込みの典型にすぎない。上から目線の思い上がりを捨て、まずは一からの調査を勧めたい。

  いずれにしても、彼らの日本叩きは度を超している。こんなものが米国の代表的メディアなら、米国の言論も明日が知れよう。(日本政策研究センター代表 伊藤哲夫)

 

〈『明日への選択』平成26年3月号〉