エスカレートする中国の太平洋進出

  太平洋へ進出する中国海軍艦艇(統合幕僚監部提供)

 中国の軍事的脅威といえば、国民の関心はもっぱら尖閣諸島周辺海域に向けられているが、われわれが以前から繰り返し警告しているように、中国の太平洋への進出がエスカレートしている。

 昨日も中国軍の爆撃機と情報収集機が、沖縄本島―宮古島間の海域上空を抜けて、太平洋に進出し、Uターンして中国へ帰った。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140309-OYT1T00426.htm

 また、3月1日には、中国海軍の駆逐艦とフリゲート艦からなる3隻が、沖縄本島―宮古島間の海域を抜けて太平洋へ向かっている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140301-OYT1T00858.htm?from=popin

 中国海軍は、西太平洋に浮かぶ日本最南端の領土・沖ノ鳥島周辺海域で、軍事訓練・演習を繰り返しているから、これまでのパターンから類推すると、近日中に防衛省からその種の情報が発表されるかもしれない。

 では、中国はなぜ西太平洋に進出するのか? 以下、『明日への選択』の記事を紹介する。


 

 中国の軍事的脅威がかつてないほど高まっている。

 ところが、ある世論調査では、集団的自衛権の行使容認に賛成の国民はわずか27%、反対は59%となっている。国民が眼前に迫る危機を認識しているならば、この結果はあり得ないはずだが、この始末はいまだに「平和ボケ」が染み付いていることを示して余りある。ここは改めて、中国の動向を見ておく必要があろう。

 

◆尖閣海域に一年で200隻以上

 まずは尖閣諸島周辺での中国の動向である。尖閣諸島が国有化された2012年9月11日からの1年間で、わが国領海に侵入した中国公船はのべ200隻以上。領海のすぐ外の接続水域でも中国公船が連日航行している。

 

◆複数のルートで太平洋に進出

 一方、中国の海洋進出は尖閣周辺に限らない。中国の当面の最大の国家目標は台湾統一であるが、同時に将来的に米国の覇権に挑戦するため、太平洋への進出を着々と進めている。このことは日本の国民の眼中に全くない。

 しかしながら、中国が太平洋に進出するルート上には、日本の海域や島嶼が存在するため、日本は好むと好まざるとにかかわらず、中国の軍事的脅威にさらされることになる。

 

 特に、2008年以降は、中国海軍が艦隊を編成し、沖縄本島と宮古島間の海域(以下、「宮古海峡」と言う)を通過して、西太平洋に浮かぶ日本最南端の領土・沖ノ鳥島の周辺海域で、軍事訓練・演習を繰り返している。沖ノ鳥島は横須賀とグアムの中間に位置し、台湾有事の際、米軍と中国軍が作戦展開すると想定される極めて重要な海域である。

※ちなみに、日本にとっても他人事ではない。沖ノ鳥島は東京から1740㎞も離れたところにあり、感覚的にはものすごく遠いところにあるが、中国軍はこの距離をゆうにカバーする強力なミサイルを有している。実際に攻撃するかどうかは別として、中国軍がそうした能力を持っていることに留意する必要がある。

 しかも、中国軍はこの海域へ往来するのに最近は「宮古海峡」だけでなく、他のルートも通過するようになっている。

 2012年4月には艦艇3隻が大隅海峡を通過し、6月にもこれが繰り返された。

 同年10月には、艦艇7隻が与那国島と西表島の間の接続水域を初めて通過し、12月には4隻が、2013年5月には2隻が通過した。

 さらに、2013年7月にはミサイル駆逐艦など5隻が、対馬海峡を通過して北進し、初めて宗谷海峡を通過。その後、太平洋で軍事訓練を行った後、「宮古海峡」から東シナ海を北上し帰投した。日本列島をぐるりと一周した恰好だ。

 

◆艦隊行動は緻密に

 こうした行動について、中国研究の第一人者、平松茂雄氏は「海洋調査とよく似たパターン」として、本誌にこうコメントしている。

 「中国は1990年代から2000年代にかけて日本周辺の広範な海域で対潜水艦作戦が目的と推定される海洋調査を繰り返しましたが、最初は大まかに調査し、その後だんだん緻密に調査・観測して行きました。最近の艦隊の行動もそれと同じで、最初は宮古海峡だけだったのが、他の海域も通るなどきめ細かくなっている。潜水艦は既に2003年に大隅海峡を、2004年に先島諸島海域を通過していますから、水上艦艇でも試しているのでしょう」

 ミサイル駆逐艦など5隻が日本を一周したことについても、平松氏はこう続ける。

 「2000年に、中国海軍の情報収集艦が日本を一周したことがありますが、あれから十数年、情報収集艦よりも格段に戦闘力の高い軍艦が艦隊で以て日本を一周するところまで成長してきている。全く油断ならない状況です」

 

◆空でも拡がる活動

 ちなみに、2013年7月24日には、中国のY8早期警戒機が「宮古海峡」上空を通過して西太平洋に進出し、沖ノ鳥島西方約700キロの空域まで往来した。9月8日にはグアム島まで往来できるほど足の長いH6爆撃機が「宮古海峡」上空を通過し、太平洋に出た後、ほぼ同じルートを通って東シナ海に戻った。

 詳細は省くが、中国の航空機は数年前まで、東シナ海の日中中間線を越えてくることはなかったが、今では中間線を越えたり、領空侵犯が行われたり、太平洋まで活動範囲が拡大している。

 中国に海からも空からも包囲される現状を直視すれば、集団的自衛権の行使を認めないという選択はあり得ない。

〈『明日への選択』平成25年10月号〉

 

※上記記事を書いた後、さらにエスカレートして、昨年10月下旬には西太平洋で、中国海軍の北海艦隊、東海艦隊、南海艦隊の3艦隊合同による、太平洋では過去最大規模となる軍事演習「機動5号」が実施されている。その時も、沖縄―宮古間を爆撃機2機、早期警戒機2機が往復するとともに、艦隊が沖縄―宮古間ばかりか与那国島周辺の海域を通過している。