現実を知れば「反対」はあり得ない集団的自衛権

 

 東シナ海上空を飛行する中国の爆撃機H6

(統合幕僚監部WEBサイトより)

 

 集団的自衛権に関わる憲法解釈変更の問題に政治の焦点が据えられつつある。4月には安保法制懇の報告書が出るとされているし、それを先取りした自民党内の議論も既に色々な場で始まっている。通常国会終盤に向け、この集団的自衛権の問題がいよいよヒートアップされていくことになるのは確実といえよう。

  ところで、この解釈変更に反対する陣営からの反論には様々なパターンがあるが、その一つに「この解釈見直しには現実的な必要性がない」とするものがある。曰く、解釈見直し派は、例えば日本防衛に関わる活動を展開中の米艦船にミサイル攻撃があった場合、その近くにいる自衛隊は何もしなくともよいのか、といった問いを発するが、一体どの国がいま米国を攻撃することなどできるだろうか、というのだ。たしかに、一見したところ説得力のありそうな指摘で、これからも反対派の材料にされかねないともいえる。

  しかし、本当にそうなのだろうか。この集団的自衛権の問題を論ずるに当たり、われわれはどうしても、それが実際に行使される有事のケースのみを想定してしまう傾向がある。とはいえ、この問題の真価が問われる最も可能性の高い現実は、実は有事ではなくむしろ平時にあるのではなかろうか。

 そのことを筆者に気づかせてくれたのが、産経の連載「集団的自衛権」である。その第1回(3月17日)に以下のような興味深い事実が紹介されていたからだ。要は以下のようなきわめて現実的な問題が、現に生起しつつあるというのである。

  中国は昨年秋、尖閣上空を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定したが、今もこの空域では米軍のP3C哨戒機やE2C早期警戒機がそれを無視し、警戒・監視活動を行っているという。ちなみに、海上自衛隊のP3C哨戒機が活動するのは日中中間線の日本側だが、米軍機が活動するのはとりわけ中間線の中国側で、当然のことながら、これには中国の戦闘機が執拗に追尾するような対抗措置をしばしばとるともいう。

  そこで問題となるのは、これがエスカレートしてくると、遠からずこの米軍機に対する援護が必要とされる段階が出てくる、ということである。かつて海南島沖で起こった米軍機と中国機との衝突といった事態が再発する恐れがあるからだ。そして、もしそうした事態を起こさせないために、米軍機の援護を航空自衛隊の戦闘機に行ってほしいという話になった時、果たして日本側は「ハイ」といえるのかということなのだ。米軍機を護衛するのであるから、これは集団的自衛権の行使に関わる問題となる。しかし、これに仮に「ノー」といえば、米軍側としては「ならば」と、このP3CやE2Cの活動を簡単に止めてしまう可能性があるということだ。そんなことになれば、この中間線より中国側は、まさに「中国の空」ということになってしまう。

 これは明日にでも現実に起こりうる問題だといってよい。そして、東シナ海が「中国の空」になってしまえば、日本の安全は確実に損なわれ、中国は益々実力による「現状の変更」を志向し始めることになるだろう。むろん、尖閣上空の制空権が取られてしまえば、尖閣防衛など絵に描いた餅にすぎない。果たしてそれでよいのか。

 むろん、こんな事例はこれに限らず数多くある。集団的自衛権行使というのは「現実的には可能性の低い問題」というのは明らかに現実を知らない空論にすぎない。今後の議論においてはこんな「今そこにある」現実も積極的に知らしめていくべきだろう。(日本政策研究センター代表 伊藤哲夫)

 

〈ChannelAJERプレミアムメールマガジン 平成26年3月27日付より転載〉