家族再生への道

家族再生への道

その哲学と政策課題

 

戦後この方、日本の「家族的編成原理」は「個人」を基本にしたものに改造されてきた。その結果、家族は崩壊し、いまや少子化どころか無子化へと「家族再生産の循環」も断たれようとしている。かかる中、まず第一に必要なのは、国家があらゆる社会政策の根本に「家族」を位置づけることだ。


 

 「無縁社会」――流行語というべきかどうかはともかく、今年世間の注目を集めた言葉の一つである。きっかけとなったのは、今年一月に放送されたNHKスペシャル「無縁社会――《無縁死》3万2千人の衝撃」。この日本ではここ数年、孤独死や行き倒れ死など、国の統計では分類の対象とはされていない「新たな死」が急増しており、それが何と年間三万二千人にも及んでいる――との事実を明らかにしたものだ。

 この放送は大きな反響を呼び、結果として「無縁社会」や「無縁死」という聞き慣れない言葉が一挙に話題の言葉となった。インターネットには主に三十代、四十代の男女を中心に、「他人事ではない」とか「わたし無縁死予備軍です」といった感想が数万件も書き込まれるとともに、当のNHKもこの反響を受け、その後も各種報道番組などを通してキャンペーンを展開していくことになった。多くの日本人が漠然と心に抱えている不安を衝いたのだ。

 むろん、そうした不安の根底にあるのは、家族、地域、職場といったものとのつながりを失い、社会から孤立して生きる多くの老若男女が前にする深刻な現実である。統計的にいえば、今この日本ではこうした一人暮らしの「単身世帯」が急増しており(むろん、その全てがこうした孤立化した状況にあるとはいえないが)、かかる傾向がこれからも続くとすれば、まさに「無縁社会」は例外どころか、一般的な現実ともなりかねないといえる。

 ちなみに、『単身急増社会の衝撃』の著者・藤森克彦氏によれば、この単身世帯はこの二十年間、男性では五十代以上の年齢階層、女性では八十歳以上の年齢階層で三倍以上に増えているという。なかでも注目すべきは五十代と六十代の男性で、この階層の伸び率は何と四~五倍にもなるともいう。むろん、その背景には様々な要因が想定されるが、六十代男性の場合でいえば、主に「未婚」と「離婚」の増加、五十代男性の場合は「未婚」の増加がその要因になっている、と氏は指摘する。

 それだけではない。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、二〇三〇年になると年齢階層別人口に占めるこの単身者の割合は、五十代男性と六十代男性ではほぼ「四人に一人」の割合になるという。むろん、理由はここに挙げた「未婚」の更なる増加で、五十代男性に占める未婚者の割合は、〇五年の一二%が、三〇年には二七・七%になると推計されているともいう。二七・七%といえば、むしろ「三割」ともいうべき数字であろう(尚、この問題については本誌八月号「小坂論文」を参照)。(日本政策研究センター代表 伊藤哲夫)

 

〈『明日への選択』平成22年12月号より抜粋〉

 

【本論文の主な内容】

・家族崩壊の現実

・人間は「家族を構成する一員」

・家族を根本に据えた社会政策へ

 

(続きは、『明日への選択』平成22年12月号で読めます)