子育て家庭をいかにして支えて行くのか

子育て家庭をいかにして支えて行くのか

出生率回復の道筋を考える


 

◇政治に欠落する肝腎な議論

 

 子ども手当は自公民の三党合意によって十月分から支給額が変わる。来年度からは、自公政権時代の「児童手当」をベースにした所得制限を伴う新制度となる。子ども手当は事実上の廃止になったといえる。

 問題は、民主党の姿勢である。三党合意直後、子ども手当は「存続する」というビラを民主党が作成し、自民党が反発して陳謝した。その後も子ども手当の創設者である小宮山洋子厚生労働大臣は子ども手当は「ちょっと姿を変えたが継続した」と述べた。こうした民主党の不誠実な姿勢には、朝日新聞の女性記者もこう鋭く批判した(九月二十八日付朝刊)。

 「許せないのは、自公政権時代より倍増するという全体の給付額ばかりアピールしていることだ。子育て世帯の家計がどうなるのか、という視点がない。控除廃止による増税と支給額の見直しで、世帯主の年収が800万円で小学生がいる家庭では年間5万円近く負担が増える。年収300万円なら増収になるとはいえ、年8千円程度。……民主党には公約違反を陳謝し、『あなたの家は負担が増えます』と正直に説明する姿勢がみえない」

 子ども手当をめぐる政治の迷走は多くの子育て家庭を翻弄し、不安に陥れた。民主党の罪はきわめて重い。

 だが、民主党の姿勢だけが問題なのではない。日本を襲う少子高齢化という重大危機に対して、その打開のカギを握る子育て家庭をどう支えていくのか、その最も肝腎な議論が与野党共になされていない。それこそが最大の問題であろう。

 最近、昨年の国勢調査結果が公表されたが、日本人の人口減が改めて確認された。同時に、これまで一貫して二人を上回ってきた夫婦一組の子供の数が初めて二人を下回ったことが判明した。わが国の少子化傾向は今や危険水域を越えたといえる。「自然減は一層進む傾向にあり、有効な少子化対策が打たれなければ、人口減社会が一気に進む流れにある」――。こう朝日の記事も、少子化対策の急務なことを訴えている。

 しかし、政治の動きは鈍い。来年度以降の新制度について、耳にするのは財源をめぐる政府と地方の押しつけ合いばかり。急激な少子化傾向の克服策について、建設的な議論は全く聞こえてこない。責任は与野党共にある。仮に自民党が子ども手当を廃止に追い込んだことで満足しているとすれば、思い違いも甚だしい。

 近年のデフレ不況の中で国民の家計は総じて減っている。そんな中で、特に若い世代が安心して結婚し、子供を産み育てることができるようにするための施策が求められている。とはいえ、この問題は政治家任せにしていてはダメで、国民が声をあげていくことが不可欠なのだろうと思われる。

 その一環として、子ども手当を総括した上で、今後の出生率の回復策につなげる道筋を考えたい。(日本政策研究センター研究部長 小坂実)

 

〈『明日への選択』平成23年12月号より抜粋〉

 

【本論文の主な内容】

・子ども手当の顛末

・子ども手当の功罪

・総合的な家族政策への転換を

・保育所運営費を現金給付に回せ

 

(続きは、『明日への選択』平成23年12月号で読めます)