「地方再生」に発想の転換が必要だ

「地方再生」に発想の転換が必要だ

人口減少サイクルの中で地方再生戦略の可能性を探る


 

◇地方の疲弊・格差だけが問題なのか

 

 ここ数年、回復基調にあった日本経済が、再び失速の危機に直面しつつある。これまでの経済回復をリードしてきた自動車や電気機械などの輸出が、昨年末(平成十九年)以降の米国経済の急減速、そしてそれに伴う円高・ドル安の急進行により、深刻な先行き不安に直面し始めているからだ。既にそれを先取りして関連各企業の景況感は軒並み悪化していると伝えられるし、この三月、日経平均株価は二年半ぶりに一二〇〇〇円を割り込んだ。

 しかし、日本経済の前に横たわる将来不安はそれだけではない。更に深刻なのは、いよいよ表面化し始めつつあるわが国の人口減少である。周知のように、既に日本の人口は二〇〇五年にピークを打ち、以後減少サイクルに転じ始めているが、この流れがこれからいよいよ本格化し始めると予測されるからだ。となれば、今後の日本経済の成長は鈍化どころか、むしろ将来予測としてはマイナスに転ずる可能性の方が高い。つまり、ここ数年の日本経済の回復は束の間の「儚い夢」に終わる恐れが出始めているのだ。

 となれば、これからの日本経済、というより日本の将来はどうなるのだろうか。

 昨年夏(平成十九年)の参院選以来、地方の疲弊だの中央と地方との間の格差だのが声高に論じられているが、それはあくまでも地域間の「富の偏在」というか、経済の「分配」に関わる問題として論じられているといってよい。しかし、実は本当に問題にすべきは、これからの中央・地方の将来の成長の見通しを含めた日本経済全体の先行きの問題なのではなかろうか。というのも、この人口減少の問題は首都圏、及びその他の大都市も例外たり得ず、実は生産年齢人口でいえば東京においても既に減少は始まっているともいえるからだ。

 ということは、単なる格差の是正、あるいは首都圏や一部輸出企業の稼ぎ出した富を、どう税などを駆使して地方に振り向けていくか、という単純な問題設定だけでは真の問題の解決にはならないということでもある。むしろこれからは、それぞれの地方が、いかに自らの力をもって、今後の成長の可能性を内発的に切り拓いていくか、ということが問われるといえる。そうした自立的・内発的成長を追求する立場に立たない限り、希望ある未来は決して開けてはこない、という話なのだ。どこかに頼ろうにも、その頼るべき中央や企業自体の将来が不透明――という時代が到来しようとしているのである。

 最今目立ち始めた各界での議論をまつまでもなく、「地方再生」は現下日本の最大の政策課題であるというのが、筆者がここ数年抱き続けてきた問題意識だといえる。地方経済の再生なくして「内需」の拡大はなく、「内需」の拡大なくして日本経済の「再生」はないといってよいからだ。

 では、この難題をどうやって実現せしめて行くべきなのか。「小泉構造改革の影」などといったことがここ数ヶ月、事ある毎に語られているが、ならばどうすればその「影」なるものを乗り越えていくことができるのだろうか。

 ここでは筆者なりの経済観、地方再生観を明らかにしてみることにより、この問題に関心をもつ関係者、とりわけ地方政治あるいは地域づくりに関わりをもつ読者に、考察のためのささやかなヒントと資料を提供できたらと考える次第である。(日本政策研究センター所長 伊藤哲夫)

 

〈『明日への選択』平成20年4月号より抜粋〉

 

【本論文の主な内容】

・人口減少の「負のスパイラル」

・産業誘致では解決できない

・コンパクトシティは発想の転換を

・市街地と農漁村との関連を再構築しよう

 

(続きは、『明日への選択』平成20年4月号で読めます)