深刻な危機に立たされる人口減少の日本

 先日も総務省による最新の人口推計が発表され、人口減少が加速しつつある日本の現状に対する関心が高まりつつある。そんな中、四月三日の日経に掲載された元総務相・増田寛也氏の提言には貴重な示唆を与えられた。以下、その一部を紹介するとともに、筆者の感想を記させていただきたい。

  まず人口減少そのものの実態についてである。増田氏によれば、わが国の人口は〇八年をピークに減少に転じているが、この流れは今後更に加速され、四八年には一億人、二一〇〇年には何と五千万人を割ることになるという。これは出産可能な若年女性の数が年を追うごとに急激に減っているためで、もはや現在の出生率が少々改善されたところで、この流れは止まるようなものではないという。

 これは増田氏の指摘ではないが、この推計を今の出生率のままで更に先に延ばせば、二百年後には何と千百五十万人、千年後には「日本消滅」という事態になるという。冗談ではない。人口減少の現実はそれほど恐ろしい状況にあるということなのだ。

  増田氏の提言はこの現実を踏まえてのものだ。人口を東京へ集中させるのではなく、地方に留めよ、と氏はまず提言されるのだが、筆者がここで改めて考えさせられたのは、「東京一極集中」というものの恐ろしさについてである。自らも東京に出てきた身でこのようなことをいうのは気が引けるが、東京という所は全国から膨大な数の若者を吸い上げる所でありながら、その若者を再生産に向かわせないブラックホールのような所でもあるということだ。出生率はダントツ最下位の一・〇九。これはある人によれば、百人の若者が東京へ出てきたとすると、曾孫世代には十二、三人になってしまうという数字だという。まさに大量の若者を飲み込み、結果的に飲み尽くしてしまうのだ。

 むろん、地方も問題である。冒頭の人口減少の予測を地方に当てはめれば、むしろこの地方に付与すべき言葉は「消滅」だという。これは今後三十年くらいの間に若年女性人口が半分になってしまうと予測される一万人以下の町の話だが、これらの町では必要な生活関連サービスそのものの維持が困難となり、更に人口は流出し、消滅に至っていくという。ちなみに北海道、青森、山形、和歌山、鳥取、島根、高知の七道県では、こうした市町村の割合がその頃には五割を超えると予測される。

 この流れを何とか緩和させるために増田氏が提言するのが、地方に「戦略的拠点都市」をつくっていくという構想である。そこに若者の東京流出を阻止する「人口ダム」のような機能をもたせるというのだ。産業の芽となる研究開発機能を創出し、地方大学の機能強化を組み込み、インフラなど環境整備と連携させていく。地方で学び地方で働く「人材の循環」を地域に生み出していくのである。

 このまま拱手傍観していれば、貴重な若者は更に東京に吸収されていく。とはいえ、その東京がこれから迎えるのは恐ろしいほどの「高齢化」の現実でもある。かつて経済成長時に東京に流入した大量の団塊の世代が一気に高齢化していくからだ。そうなった場合の医療や介護の将来を考えると、事態は「深刻」を通り越して「絶望的」になる、と増田氏はいう。

 恐らくそうなった場合、東京は更に若者を求めることになるだろう。しかし、そこで若者を吸収されたら、地方はそれで終わる。となれば、残るは発想の転換しかない。若者を東京に吸収するのではなく、むしろ余裕ある東京の高齢者の地方移住を促すのだ。そうなれば、地方には雇用の場が生まれ、彼らのお金はそこに落ちる。

 この頃は、既に地方では住居も介護施設も余っている。この一石二鳥の策を考えない手はない。(日本政策研究センター代表 伊藤哲夫)

 

〈『明日への選択』平成26年5月号〉