人口減少・東京一極集中の恐怖

 前々回の番組だったか、わが国の「人口減少」の恐ろしい現状について触れさせてもらった。元総務相・増田寛也氏の指摘に触発されてのものだ。このままの傾向が続くとすれば、わが国の人口は48年には1億人、2100年には何と5000万人を割ることになるのだという。

 むろん、増田氏の指摘はそうした数の予測に留まらない。筆者が改めて認識せしめられたのは、とりわけ若年女性の数が今激減しているという現実と、これから東京で恐ろしい超高齢社会化が始まるという現実であった。

 増田氏の多角的な視点からの指摘を大幅に端折ることになることをお許しいただいた上で、以上の2点について筆者の感想を書いてみたい。

 まず若年女性の数という視点だが、これまで人口問題といえば議論の対象とされてきたのは合計特殊出生率で、1・41だの1・39だのといった数字が一人歩きしてきた。しかし、この数字も確かに問題だが、それ以上にその母数となる若年女性の数がもっと問題にされねばならないということだ。

 というのも、出生率がたとえ2を超えたとしても、母親となり得る女性の数が減少していけば、人口減少は止まることがないからである。その意味では、若年女性の数がどの程度減りつつあるのかを押さえないと、ただ出生率を云々するだけの議論では、この問題に対する本当の危機感が出てこないともいえる。

 増田氏の指摘によれば、今後30年の間に若年女性の人口が半減すると予測される市町村の数は、市町村全体の数の3分の1に当たる523市町村になるとされ、これはまさにその市町村そのものの「消滅」ともいうべき数字であるという。

 一方、ショッキングなのは、東京でも深刻な問題が起こり始めるということだ。高度成長の時代に大量に東京に移入してきた団塊の世代が、これから一気に「高齢化」に向かうからだ。

 そのことを考えた場合の医療・介護の将来を予測すれば、事態は「深刻」を通り越して「絶望的」だと増田氏は指摘する。そうした高齢者への社会保障を考えれば、いかに東京でももはや若年層の人口は圧倒的に不足するという他ないからだ。

 苦し紛れに、今まで以上に若者を東京に吸い上げたとしよう。そうなれば、「消滅」状態にある地方は本当に死滅する。文字通り、子供が生まれない地域になってしまうのだ。

 それだけではない。増田氏は東京の異常に低い出生率を問題にする。つまり、東京は地方のまさに「金の卵」たる若者を大量に東京に吸い上げながら、その若者をただ労働力として消費するだけで、肝心な再生産に向かわせないからだ。まさに「ブラックホール」のような所だと氏は指摘するのである。

 ちなみに、先日のNHKクローズアップ現代では、もはや高齢者すらいなくなった地方をあきらめ、東京での開業を模索する介護事業関係者の動きを紹介していた。その業者が地方の若い女性を、その東京での新規事業に雇用すべく入社面接を行っているシーンである。当事者にとってはこれしかない生き残りの問題であろうが、見ている方とすれば、これはまさに「滅びへの道」ではないか、と思わざるを得なかった。

 5月4日の日経によれば、政府は50年後の人口を1億人に維持すべく、ようやく本格的な対策に着手することになったとのことだ。

 簡単にできることではないが、遅きに失したとはいえこのような動きが出てきたこと自体は、まずは評価すべきことだろう。繁栄を求めることはよいが、自らの足下を崩しながらの追求だとしたら、誰が見てもそれは持続不可能で愚かなことだという他ないからだ。(日本政策研究センター代表 伊藤哲夫)

 〈ChannelAJERプレミアムメールマガジン 平成26年5月9日付より転載〉