「嫌韓」では済まない現実

 この一カ月半の間、ニュースの主役はあのセウォル号沈没事故であった。事故直後の誤情報の拡散、船長の逃亡に象徴されるセウォル号側の責任放棄、海洋警察の救助体制の不備、無理な船体改造や過積載、それを見逃してきた海運当局の無責任体制……連日新しい話題に事欠かなかった。テレビの情報番組や週刊誌は、最近流行の「嫌韓」も反映しているのだろうが、その逐一を韓国の問題体質として報じていたが、その背後に日本の安全保障に影響する深刻な現実があることが語られることはなかった。

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 というのも韓国では軍においても類似した問題が指摘されているからである。韓国海軍がアジア最大と自称する「独島艦」は、ホーバークラフトなどを搭載する排水量一万八千トンの強襲揚陸艦である。「反日」のシンボルとされる「独島」と命名したくらい力を入れた軍艦だが、七年前に就役して以来、何の役にもたっていない。搭載レーダーがまったく役に立たないことが就役直後に分かり、対空機関砲は設置場所を間違えたため、スイッチを入れれば自動的に(?)甲板上の自軍ヘリに命中してしまうという。

 それでも図体が大きく見栄えはするので、観艦式などの行事にはよく登場していたが、昨年九月、黄海を航行中に発電室が火災となり、二基の発電機のうち一基が火災で、もう一基は消火の際の浸水でともに停止。平時に軍艦が漂流するという前代未聞の出来事が起こった。

 潜水艦でも同様の問題が起こっている。最新の214型潜水艦はドイツが設計し、韓国の現代重工が作ったのだが、一番艦は騒音が大きすぎて修理したものの原因は不明のまま。二番艦と三番艦は船体本体と艦橋などのセールをつなぐ部分の強度不足が判明。原因は韓国製ボルトの不良だというが、潜水艦の強度不足は致命傷である。

 ちなみに、この三番艦の名称は「安重根」。小論の論旨とは関係ないが、「反日」艦は出来が悪いようである。

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 空軍の事情も変わらない。昨年十二月、中国に対抗すべく防空識別圏を拡大したものの、空域監視のために導入した早期警戒機四機は部品不足で他の機体から部品をとる「共食い整備」状態で、一機しか飛べないのだという。これでは防空識別圏は穴だらけということになる。

 レーダーで不明機を補足しても、緊急発進するF15K戦闘機も共食い整備が常態化、さらに運用の不備も指摘されている。五年前には滑走路から整備場に移動させようとしていたF15Kがマンホールに落ちて大破するという事件が起こった。マンホールの上を移動させるのも問題だが、このマンホールが手抜き工事だったというのだからあきれてしまう。

 まだましと言われている陸軍だが、最前線でも志気・錬度はかなり低いようである。一昨年九月、亡命しようとした北朝鮮軍兵士が三十八度線の非武装地帯を通り抜けて韓国側に入ったことを最前線部隊が見逃してしまい、さらに亡命兵が警備隊事務所のドアをノックしたのに誰も気付かず、韓国兵の居住区に行ってようやく亡命意志を伝えるという「ノック亡命」事件が起こっている。

 しかも、現場の怠慢を隠蔽するため、出先部隊は虚偽報告、そこに参謀本部の錯誤も加わるという、セウォル号沈没の際と変わらぬ混乱が韓国陸軍でも起こっていた。

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 金日成が朝鮮戦争をしかけた理由が二つあると言われている。一つは、米国のアチソン国務長官が防衛線として引いた「アチソン・ライン」に韓国が含まれず、米国には韓国防衛の意志がないかのようなメッセージを北朝鮮に出してしまったこと。もう一つが韓国軍の弱さ。装備はむろんのこと、士気も錬度もともに低いと金日成は見切って南侵を決断した。

 米軍予算が大削減されるなか、韓国軍のこの体たらくをみれば、新たな南侵だって起こりうるのではあるまいか。韓国の体質を問題とするなら、「嫌韓」では済まない、日本の安全にとって深刻な現実があることを知らねばならない。(日本政策研究センター所長 岡田邦宏)

〈『明日への選択』平成26年6月号〉