地方創生「ローカル・アベノミクス」に期待する

地方創生「ローカル・アベノミクス」に期待する

地方創生を旗印に内閣に「まち・ひと・しごと創生本部」が新設された。これは「ローカル・アベノミクス」とも言うべき「新たな経済政策」がスタートしたことを意味する。従来の経済政策・成長戦略は「グローバリゼーションへの対応」が大前提だったが、地方創生の問題はそれとは別の次元の「内需中心の経済」の問題であり、「次元の異なる」対応が求められる。しからば、「ローカル・アベノミクス」が目指すべき政策とはどのようなものか。


 

 「地方が成長する活力を取り戻し、人口減少を克服する」

 地方創生を旗印に、この九月に内閣に新設された「まち・ひと・しごと創生本部」はその基本方針の冒頭でこのように謳う。本誌はここ数年、日本の将来にとっての少子化問題の深刻さと地方経済活性化の急務を訴え続けてきたが、ようやくこの二つが、それも双方が一体化された形で、政府の最重要課題として打ち出されることとなったといえる。

 周知のように、人口減少問題を考えるに当たっては、地方から東京圏への人口流出(とりわけ若い世代)にまず歯止めをかけることが不可欠――としたのが先般の日本創成会議による問題指摘であった。地方もまた出生率低下の問題を抱えているとはいえ、出生率全国最低の東京圏と比べればまだ相対的に高い。とすれば、その地方から東京圏(増田氏はこの東京圏を「人口のブラックホール」と呼ぶ)への若者の流出に依然として歯止めがかからないとすれば、それはわが国全体の人口減少を更に加速させる最悪のパターンが続くということでもある。その意味で、人口減少問題に対処しようとするならば、この地方から東京圏への人口流出をまず止めることが課題となってくるといえる。

 前記基本方針はそうした観点から、「魅力あふれる地方を創生し、地方への人の流れをつくる」と謳い、そのために「従来の取組の延長線上にはない次元の異なる大胆な政策を中長期的な観点から、確かな結果が出るまで断固として力強く実行していく」と表明した。「地方から東京圏へ」ではなく、「東京圏から地方へ」の人の流れをつくる、というわけだ。遅きに失した観もないわけではないが、まさに長年待ち望んだ国としての不退転の決意表明であり、今後の本格的展開に大いに期待したい。

 そこで、そのための具体策である。これまで経済といえば「グローバリゼーションへの対応」ということが絶対の命題とされ、成長戦略といえばそうした課題に応えるための一連の政策メニューがその都度細々と提示される、というのが定番であった。しかし、まずここで論ずべきは、そのような固定化された発想からの根本的転換である。地方創生に関わる地域経済の問題は、実はグローバリゼーションとは別の次元にある内需中心の経済の問題であり、それにはまさに「次元の異なる」対応が求められるということなのだ。

 このことを最近、G(グローバル)の経済とL(ローカル)の経済、という対比をもって論じているのが近著『なぜローカル経済から日本は甦るのか』の著者・冨山和彦氏である。氏はGの経済とLの経済はルールも経済原理も違う全く別の経済であり、それを論ずる際はこの二つを明確に分けて論ずることが求められるという。

 「仮にGの経済圏で頑張っているトヨタや日立、パナソニックといった企業がどれほど好調になったとしても、それでほんとうに潤うのは、日本国民の二割にすぎません。残り八割は非製造業や……製造小売業など、いわゆる伝統的な製造業ではない世界で働く人たちが占めています。/私自身(が関係する)……岩手や福島ではグローバル製造業の雇用はそもそもなく、ほとんどの人が小売業や卸売企業、介護、医療、教育、保育関係に従事しています。Lで働く彼らにとって、トヨタの輸出が増えたところで直接的な関係はない。すると八割の人が暮らす地域経済をどうするのかという問題が、結局のところ残ってしまう」(『Voice』8月号)

 まさに今日、地方創生の問題としてまず論じられるべきは、ここにいう「Lの経済」の問題だということなのだ。ちなみにいえば、このGの経済を主なターゲットとした経済戦略がこれまでの政府の成長戦略における中核であり、それがアベノミクスの「三番目の矢」と理解されてきたことは先に指摘したところでもある。しかし、今ここで新たに求められるのは、むしろこの「Lの経済」に対象を特化したローカル・アベノミクスに他ならないのである。

 そこで、このローカル・アベノミクスという視角から、今求められる地方創生の課題を考えてみたい。(日本政策研究センター代表 伊藤哲夫)→続きは、こちら

 

【この論文の主な内容】

 ・グローバリゼーションとは別の次元の経済
 ・「地域内循環」の極意
 ・「経済価値」の追求から「社会的価値」の追求へ
 ・日本生き残りへの最後のチャンス

〈『明日への選択』平成26年11月号〉