朝日慰安婦報道問題・第三者委員会検証報告をどう見るか

 朝日新聞の慰安婦報道に関わる「第三者委員会」の検証報告が出た。充分な時間がとれず、ざっとしか読めていないが、とりあえず印象に残ったことを記したい。

 「第三者委員会」とはいえ、朝日が任命した委員である。一読しての印象は「やはりこんなところか」というものだった。批判はあるが、責任には蓋だからだ。

 とはいえ、注目したところもあった。朝日報道が国際社会に与えた影響に関わる部分での波多野澄雄氏の分析と、個別意見の部分での同氏と岡本行夫氏、北岡伸一氏による問題指摘である。ただ、後者は他紙にもそれなりに紹介されていたので、ここではとりわけ前者の波多野氏の指摘を紹介してみたい。

 波多野氏がまず朝日報道の影響として指摘するのが、92年1月11日の「慰安所 軍関与示す資料」と題した記事である。これは「韓国世論を(問題の)真相究明、謝罪、賠償という方向に一挙に向かわせる効果をもった」と氏は分析する。

 むろん、これは「強制連行」を指摘した記事ではなかった。しかし、韓国紙には「日本政府関与決定的な証拠」と「強制連行」に関与したかのごとく報道され、更には女子挺身隊強制連行、そしてその中には「小学生までも」という報道にもなっていったとする。むろん、朝日としてはそれを間違いだと否定することもできた。にもかかわらず、むしろこれを「小学生まで慰安婦に……」とそのまま報ずるとともに、「国民の対日感情が急速に悪化している」と他人事のように報じた、とするのである。

 これは当然、その直後の宮沢首相の訪韓に大きな影響を与えた。これについて波多野氏は「(11日のスクープ記事は)宮沢訪韓に向けた一定の政治的意図が働いていた、と指摘されても否定できない」と指摘している。つまり、朝日が仕掛けたとするのだ。

 いわゆる「強制連行」の問題については、朝日はいつの間にかそれを「狭義の強制」という言葉にすり替え、問題は「広義の強制」だといういい方に転じたが、これについて波多野氏は、朝日は当初は明確な「狭義の強制」論だったとし、それが焦点であるとの報道を続けていた、とする。これは朝日としては触れてほしくない点であったはずだ。

 ところで、波多野氏の問題指摘の中で、筆者がよくぞ指摘してくれた、と評価したのはクマラスワミ報告と女性戦犯法廷に対する、朝日の「突出した」報道ぶりであった。まず前者については、朝日の立場は「全面的な賛意」を表明するもので、日本政府を批判するものが多かった、とする。ならば今、朝日はこの間違いだらけの報告をどう位置づけるのか。と同時に、これに朝日が影響するところは本当になかったのか、これもまた本来は明らかにすべき論点だったはずだが、これについては指摘はない。残念なところだ。

 後者については、朝日報道の主催者への密着ぶりを指摘しているが、同社説は「人権や人道についての国際社会の意識は、女性たちの声を受けて少しずつ広がり、深まってきた」とした上で、「『女性法廷』の試みは、その流れをさらに確かなものとするために、東京から世界に発信した問題提起と受け止めたい」とまで書いた、と指摘している。

 最後の「個別意見」で、岡本、北岡、波多野の3氏は、朝日報道を「事実に角度をつける」「火のないところに煙を立てる」「キャンペーン体質過剰」「過剰な正義の追求」「被害者の立場に過剰に寄り添う取材対象の選択」「運動体と一緒」「『人権派』の一握りの記者が報道の先頭」……等々と性格づけたが、まさにこのような報道が、この慰安婦問題に関し、なされたということでもあろう。いずれにしても、朝日報道の問題追求はこれで終わりにするわけにはいかない、ということでもある。(日本政策研究センター代表 伊藤哲夫)

〈ChannelAJERプレミアムメールマガジン平成27年1月1日付〉