地方にしかない「価値」をもっと大切にしよう

 日本の自治体の約半数が30年後には「消滅可能性都市」――というショッキングな問題提起から、早くも十ヶ月になろうとしている。おそまきながら国・地方挙げた対策が動き始めているようだが、そのためには何といっても地方経済の活性化が欠かせない。そのためには何がポイントとなるか。以下はあくまで素人の「勘」のようなものでしかないが、筆者が最近とりわけ考えるポイントについて書かせていただきたい。

 第一は、冨山和彦氏いうところの「Gの経済」と「Lの経済」の分別、という視点である。「成長戦略」などというと、誰もが口を揃えるかのごとく「グローバル競争にいかに勝ち抜くか」という議論となる。しかし、そうした「Gの経済」は実は日本経済の3割にすぎず、残りの7割はそれとはほぼ無関係な「Lの経済」であり、この「Lの経済」にはあくまでも「Lの経済」の論理が基本になるのではないか、という視点である。実はこの点が意外と理解されておらず、議論を混乱させる原因ともなっている。それをもっと関係者の共通認識とする努力が必要だと考えるのだ。

 第二は、その「Lの経済」の最重要眼目たる、その域内での「経済循環」という問題である。地域活性化などというと、ひと頃は大型スーパーを誘致することなどが焦点となってきた。しかし、考えてみれば、それはその地方で一定程度の雇用創出効果をもったことは事実としても、結果的にはその地域から地域のお金を吸い上げ、それを中央や海外に流出させる巨大収奪システムでしかなかった、という現実である。ゆえに、この「流出」のシステムを「循環」のシステムに改める、という視点が重要だということだ。中国など原材料供給国への支払い、あるいは他地域への新規出店の原資、などという形で流出させてきたこのお金を、逆にその地域に留め、その地域内で循環させる、という発想だ。

 例えば、これを石油や電力などのエネルギー購入を例に考えてみよう。つまり、こうしたその地域にないものを大量に域外から購入しようとすれば、その分その地域の膨大なお金を域外へ流出させることになる。しかし、逆にこれをその地域産の自然エネルギーや電力に代替させることができれば、その流出を止めることができる、という話だ。それだけではない。その代替のために「新規産業の創出」という話だって出てくるかも知れない。つまり、「Lの経済」では、その地域の経済をその域内でともかく「循環」させる、という発想がまず重要な眼目になるということなのだ。

 そして第三は、「Lの経済」には「Lの経済」を成り立たせる「固有の価値観」が重要だ、という話である。地方が自らがもつ固有の価値を忘れ、ただ都会的なものを追い求めるだけになれば、その地方の将来は決まったも同然、という話である。しかしそうではなく、その地方がその地方でなくては成り立たないもの、都会では絶対に得られないもので勝負しようとすれば、その地方の可能性は確実に開花し始める、ということだ。

 これは恐らく、多くの人々の感想でもあろうが、日本国内を旅行していてまず感じさせられるのが、どこへいっても同じような日本があるということだ。とりわけ町郊外のロードサイドの光景がそうだといえる。そこには便利があるかも知れないが、潤いがなく、個性がなく、誇りもない。これを「ファスト風土化」と評した論者がいたが、まさに町全体が安易な出来合いの町なのだ。これでは特色ある「Lの経済」が育つはずがない。

 むろん、簡単な話でない。しかし、それを承知の上で、もっと固有の「価値観」を大切にしたらどうか、といいたいのである。都会追随では「地方」は育たない。地方にしかない「価値」、地方でしか得られないものが、「地方」を創造していくのではないか。(日本政策研究センター代表 伊藤哲夫)

〈ChannelAJERプレミアムメールマガジン平成27年2月10日付〉