続・南シナ海の今は明日の東シナ海

 先月に続いて中国の海洋覇権拡大について書かせていただく。七月、中国が東シナ海の日中中間線間際に海洋プラットホームを建てていることが公表された。ガス田掘削用(と称する)プラットホームで、いまから十年以前にも注目を集めたことがあるが、当時はまだ四基だった。それがこの一年間で十二基が新設され、さらに四基が建設途中だという。

東シナ海・日中中間線ぎりぎりの海域で稼働する

ガス田採掘施設「樫」(外務省HPより)

 

 しかも、そのうち何基かは軍事転用の可能性が高いとされる。レーダーを設置すれば、南西諸島の大部分がレーダーの覆域に入る。プラットホームにあるヘリパッドを使えば、ヘリコプターや無人機の基地にもなる。そうだとすれば、軍事施設が東シナ海の真ん中に作られつつあるということになる。

 排他的経済水域(EEZ)では、沿岸国は海底の鉱物資源の開発を排他的に行うことができる。中国は、プラットホームを作っているのは、日中中間線の中国側EEZであり、何の問題もないとしているが、しかし、東シナ海の排他的経済水域を巡っては、日中の主張は大きく隔たり対立している。日本は日中の中間線を主張しているが、中国は南西諸島の列島線のすぐ北側にある沖縄海溝までが中国の排他的経済水域だと主張している。つまり、東シナ海のほぼ全域が「中国の海」だというのが中国の主張である。

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 このプラットホーム設置を放置すればどうなるか。中国の手口は見えている。

 中国は南シナ海のほとんどすべて(面積で言えば約八五%)が中国領土だと主張している。その領有権主張に何の根拠もないことは言うまでもないが、中国は、その南シナ海のフィリピン西方にあるスプラトリー諸島にある七つの岩礁を埋め立てて人工島を作り、そこに滑走路などの軍事施設を建設し、その海域では、既に中国の公船、漁船が横行している。

 こうした人工島造成は単に中国は横暴だという話で済まない問題と言える。埋め立てを行っている七つの岩礁のうち、五つは国際法で言う低潮高地であって(高潮時には水没する)、そもそも十二海里の領海はむろんのことEEZも主張できない「礁」でしかない。そこを埋め立てて人工島をつくるのは明らかに国連海洋法条約違反である。

 残り二つは高潮時に水面上に残る岩礁だが、それについても人工物をつくるには沿岸国(大陸棚を有する国)との協議を必要とすると条約で定められている。勝手にはつくれない。また、公海上でも人工物をつくって岩礁を破壊し、海洋環境を破壊することも禁じられている。しかし、中国は沿岸国と協議を行うつもりはなく、国際仲介裁判所に対するフィリピンの提訴も完全に無視している。

 スプラトリー諸島に対する領有権主張に根拠がないというだけでなく、いま行っている「埋め立て」も明白な国際法違反なのである。

 それは「力による一方的な現状変更」であり、中国による国際法秩序の破壊と言える。つまり、この問題は単に中国の不法行為によってフィリピンなど沿岸国の権利が侵害されているというに止まらない。あえて言えば、その世界中の国が許してはならない不法行為なのである。

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 しかも、スプラトリー諸島のなかでも一大拡張工事を行っているミスチーフ礁など二つの岩礁は明らかにフィリピンのEEZのなかにある。つまり、東シナ海でも、次の段階は、中間線の日本側海域にもプラットホームが作られるだろうし、南西諸島の目と鼻の先を中国の公船が海洋権益を保護すると称して、我が物顔で横行することとなるだろう。既に九六年には中国の石油掘削船が日本側海域で試掘を行ったこともある。

 その意味で、フィリピンやベトナムといった国々との防衛協力も必要であり、現在参議院で審議されている平和安全法制は不可欠と言える。同時に、中国こそ国際法秩序の破壊者だとの共通認識を拡げる国際的世論戦もまた重要となっている。(日本政策研究センター所長 岡田邦宏)

〈『明日への選択』平成27年8月号〉

 

※ガス田問題を詳しく知りたい方は→『これではダメだ! 日本の海洋戦略』