食料と環境の時代

食料と環境の時代
崩壊寸前の「食料基盤」と「国土」をどう再生するのか?

著者:『明日への選択』編集部

定価:700 円+税

 

食料の確保は、軍事、エネルギーと並ぶ国家存立の重要な柱。また、四方海に囲まれ、水と緑にあふれる日本の国土・環境は、日本文化や日本人の心を育んできた、国家と国民生活の基盤である。今、この食料と環境の問題にかつてない関心が寄せられている。だが、現場が抱えている現実の問題となると、話はとたんに深刻になる。毎日口にする食料の6割を他国に依存するという無惨な現実。「食」を支える農業・漁業の衰退。一方、環境対策には森林が果たす役割が不可欠だが、現実には森林の荒廃、林業の担い手不足、山村の限界集落化が止まらない。この背景にはどんな事情があり、どうすれば打開していくことができるのか。各分野の第一線で活躍する専門家が、独自の取組みとそれに賭ける思いを語ったアンソロジー。(A5判104頁)

 

【はしがき】

ここ2年ほど、食料と環境の問題にかつてない関心が寄せられている。食料については、これまでさしたる関心が向けられてこなかったが、昨年の毒ギョーザ事件や世界的な穀物価格の高騰をきっかけに一気に関心が高まった。環境については、最近の環境意識の高まりが、「環境サミット」と銘打った北海道洞爺湖サミットの開催に前後して一段と高まった。その後もこの関心に変化はなく、今もメディアなどには食料自給率だのエコ対策だのといった言葉が連日躍っている。調べたわけではないが、今や食料と環境は国民にとって、最も関心度の高いテーマになりつつあるといってもよいのではないか。

一方、このような高い関心の反面、現場が抱えている現実の問題となると、話はとたんに深刻になる。わが国の食料自給率はつい先日、40%から41%に上がったとはいうものの、依然としてこの数字は先進国中最低であることに変わりはないし、裏を返せば、食料のじつに六割を他国に依存するという無惨な現実がそこにある。なによりも、食料の供給基盤である農業・漁業の就業人口の減少と高齢化は止まる兆しさえない。また、環境対策には森林が果たす役割が不可欠だといわれるにもかかわらず、むしろ聞こえてくるのは森林の荒廃、山村の限界集落化、林業の担い手不足といった正反対の話ばかりといえる。一体、この現実の背景には何があり、またどうすればこの現実を打開していくことができるのか。

かかる現実の中、われわれ日本政策研究センターはこの2年ほど、かかる問題を含めた地方経済全体の問題にスポットをあててきた。地方経済の不振が指摘されて久しいが、それはここに示した農林漁業・農山漁村の衰退と決して別物の話ではないし、不振打開もこの問題解決と無関係ではないと考えるからだ。とすれば、いかにすればこの現状を打開し、地方経済の衰退を乗り越え、食料と環境にとっての未来を切り拓いていくべきなのか。

ここに収録したインタビュー記録は、そうした問題関心をもつわれわれが、それぞれの分野で専門的かつユニークな取り組みを行っておられる先生方に、問題の分析と打開の方向性を問うたものである。農業や漁業が抱える深刻な現状、あるいはそれに関わる流通や消費に内在する問題、また食料戦略のあり方の問題等々、何が解決されるべき問題で、その解決の糸口はどこにあるのか――。

一方、国土保全の最前線の役割を担う林業についても、厳しい現状の中で再生の道を探っておられる専門家にその独自の試みを聞かせていただいた。むろん、論点はこれに尽きるわけではないが、問題の大凡のポイントは提示できたのではないかと思っている。

話を聞く立場として常に心がけたのは、単に読者にこの問題に興味をもってもらうことに留まらず、この問題をわれわれ自身の問題として捉え、解決の方向をともに考えていきたい、ということだった。それは簡単な話でないことは当然としても、これらの問題解決を抜きに将来の日本のあり方を責任をもって論ずることなどあり得ないし、そもそも責任ある国家の将来構想などというものは成り立たないと考えるからである。食料を他国に依存したままの国に真の国家的独立はあり得ないし、またこの国土が荒廃して国家やわれわれの生活の豊かさも心の豊かさもまたあり得ない。とすれば、今こそ心ある国民挙って、この問題についての真剣な議論を開始すべき時なのではないか。

このブックレットを編集するに当たり、インタビュー収録を快くお許しいただいた先生方に心より感謝申し上げるとともに、もっともっとこの問題に関わる本格的な議論が巻き起こり、各地で様々な取り組みが始められていくことを念願してやまない。

 

【目 次】

第1部 食料と消費者
成熟した消費者なしに農業再生も魚食文化の維持もありえない

・バカな消費者が「魚食」を滅ぼす
生田與克(築地マグロ仲卸「鈴与」三代目)

・農業を滅ぼす「低価格志向」
山本謙治(農産物流通コンサルタント)

第2部 食料と農業・漁業
われわれの「食」は何によって支えられているのか

・体験農園から始まる農業再生
西辻一真(株式会社マイファーム代表取締役)

・農業政策を国家戦略として進めよ
鈴木宣弘(東京大学大学院教授)

・日本漁業はなぜ衰退したのか
小松正之(政策研究大学院大学教授)

第3部 環境と林業
国土を保全する林業なくして国家も国民生活も成り立たない

・「木を伐る」が森を救う
安藤直人(東京大学大学院教授)

・林業も「地産地消」で再生できる
中嶋博幸(中嶋材木店代表取締役)

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