地方創生・旧来型志向の抜本的転換を

 この日本を衰退国家たらしめないためには、経済活性化は不可欠な課題である。アベノミクスはまさにそのためのものであるが、出発当初の目覚ましい勢いと比べれば、このところの少々の停滞感は否めない。とはいえ、何事もただ一直線に進むものではないと考えれば、むしろこれをアベノミクスの第一段階から第二段階への不可避的な「ギアチェンジ」の機会と捉え直し、ここでこれまでの歩みを見直し、第二段階の新たな課題を設定し直していくことは、内外の状況から見てもタイムリーな作業ではないか、と考える。

 そこで、この第二段階の課題である。筆者はやはり「地方」こそがそのポイントになると考える。むろん、それこそが地方創生なのではないか、といわれるかも知れないが、現在のようなものでは恐らく役人のアリバイ作業を出ることはない。ここは陣容も発想も抜本的に転換し、オール・ジャパンで取り組む姿勢がほしい、というのが筆者の願いなのである。

 むろん、理由は多々ある。ただつきつめていえば、地方から中央へ、中央から海外へ、という現在の経済構造は見直しの段階に近づいているのではないか、との認識をもつのだ。海外に成長する市場があり、中央に富を生み出す力があれば、地方がそのための資源・人材の供給源に位置づけられていくのは必然的な道であり、構造であったとはいえる。しかし、その前提が今や様々な面で崩れ、一方その結果が今日の地方の疲弊であり、人口減少であり、消滅への道にまでなり始めているのだとすれば、ここは当然、この道を再検討してみることは、避けて通れない課題であると考えるのだ。

 しからば、どうすればよいのか。むろん、筆者のような者に解答などある筈もないが、少なくとも皆がもう一度この構造に眼を向け、地方がもつ独自の価値を改めて見出し、人口を一方的に中央に流出させなくともよい構造へと転換させていくこと、とはいえるのではないか。このことを佐無田光氏は以下のように指摘する。

 「農村の特徴は自然条件に規定された分散的居住にあり、都市に比べて社会的資源的条件ははるかに多様である。求められていることは、国内分業の末端の資源供給構造から脱却して、地域資源に基づいた多面的な収入源をつくり出し、地域内経済循環を高め、商品開発や市場開拓、企画・イベントなどの知識生産工程を高度化することである」

 これを筆者なりにいえば、地方は自らがもつ固有の資源をもう一度見つめ直し、ただそれを中央に供給するだけで終わらせるのではなく、それにひと手加えて独自の商品とし、それを新たな産業とし、域外に売り込む手段を考え、それをもって収入源を増やし、より高度な経済循環を創り出していく、ということであろう。そこで求められるのは、そのための人材であり、工夫であり、知識であり、知恵だということだ。

 筆者もそうした事例として、これまでにも様々な地域の取り組みを紹介してきたが、ただその度に痛感してきたのは、そうした地方の「自立化」をもっと本格化させていくためには、その地域の住民のみならず、国民全体の意識変革もまた求められるということであった。彼らの意識も、まだまだ地方から中央へ、中央から海外へという志向、そして単なる便宜性や安価性追求といった旧来型の志向に留まっており、これを根本から変えていかなければ、この流れを変えることなどあり得ない、と痛感させられてきたからだ。

 そして、そうした課題を考えれば、政府にはもっともっとやるべきことがある。筆者はこれは一億総活躍社会の基礎ともなるものだと考えるが、そうした視点からも取り組みを切に願う次第だ。(日本政策研究センター代表 伊藤哲夫)

〈『明日への選択』平成27年11月号〉