テロ対策・「緊急事態」条項の憲法改正を急げ

テロ対策・「緊急事態」条項の憲法改正を急げ

パリ同時多発テロ事件は、厳格な非常事態法制を持つ「自由の国」フランスと憲法に「緊急事態」規定がなく平常時と同じ対応しかできない日本の現状を対照的に浮かび上がらせくれる。


 フランスで凶悪な同時多発テロが発生した。十一月十三日の夜、パリ中心部でほぼ同時に銃の乱射や自爆が起こり、百三十名が犠牲となり多数が負傷した。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)の犯行だと断定されているが、市民を無差別に狙ったテロが現実化したことの衝撃は大きい。

 この一年間、ヨーロッパとその周辺ではISやアルカイダなどイスラム過激派によるテロが多発している。フランスでは一月に風刺画新聞社襲撃(十七人死亡)、チュニジアでの外国人観光客をターゲットとした二度の銃撃事件(三月・邦人三人を含む二十人以上、六月・英国人など三十八人死亡)、エジプト上空でのロシア機爆破事件(ロシア人・二百二十四人死亡)は、日本でも大きく報じられた。「ジハード(聖戦)」を唱えるイスラム過激派によるテロ多発時代に入ったと言えよう。

 そうしたテロは「世界のどこでも起こりうる」(G20での安倍首相の発言)のであり、日本にとっても他人事ではない。今年一月、ISは邦人殺害の映像を流した際に日本攻撃を明言した。アルカイダもかねてから日本への攻撃を明言している。ヨーロッパのみならず日本にとってもイスラム過激派によるテロは「今そこにある危機」と言える。

 多くのメディアはパリの事件を受けて日本はこうした国際テロにどう対処するのかと議論しているが、その中心はテロ情報を事前にどう取得するのかとか、水際での阻止が重要だという論調にある。むろん、それらは重要な課題であり、安倍内閣も外務省・警察・防衛省による国際テロ情報収集ユニットを大幅に前倒しして発足させると発表している。

 しかし、その一方でテロ対策の根本ともいうべき問題がほとんど語られていないように思えてならない。それは緊急事態に対する国家としての構えとも言うべき緊急事態法制の問題である。事前防止に全力を挙げ、テロを防止できるに越したことはないが、事件が起こってしまった場合、国家としていかに被害を軽減して国民の生命を守り、社会の秩序と安全を維持・回復するのかという問題を抜きにして、テロ対策は語れないと考えるからである。

 とりいそぎフランスでの事件対処と比較したうえで、憲法や法令を中心に日本の現状を整理し、緊急事態法制の問題について考えてみたい。(日本政策研究センター所長 岡田邦宏)

〈『明日への選択』平成27年12月号〉

 

【本稿の主な内容】

 ・発動された「非常事態法」

 ・日本では対応不可能

 ・「人権宣言の国」が持つ厳格な緊急事態法制

 ・緊急事態対処の常識が欠落した日本

 ・テロは国家の正統性を脅かす

続きはこちら