民進党の矛盾と憲法改正論議

 やはり民進党は共産党にからめとられてしまったとの感が深い。参議院選挙での敗北を受けて「民共共闘」に対する批判が党内からあがったが、一カ月も経つと反「民共」派は勢いがなくなりつつあるという。民進党の現執行部は「政権選択選挙で綱領や政策が違うところと一緒に政権をめざすことはあり得ない」(蓮舫代表代行)と言っているが、その一方で七月二十六日の野党四党の幹事長・書記長会談では「次期衆議院選でも可能な限り選挙協力を行う」方針を確認している。何とも矛盾した話だが、その背景には、参院選と同様に衆院選でも共産党が候補者を降ろしてくれれば自分の選挙に有利になると考える民進党衆院議員が多いとの事情があるからだと報じられている。

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 一方、共産党の方は、志位委員長は八月五日の講演で「参院選では国民連合政府の提案が契機となって野党統一候補が実現した。全国規模での『統一戦線』、選挙協力が初めて現実となり、大きな成果を結んだ」と総括し、「日本共産党綱領の統一戦線の方針が、国政を動かす、戦後かつてない新しい時代が始まっている」と意気込んでいる(しんぶん赤旗・八月二十四日)。

 共産党の綱領に言う「統一戦線」とは、基本政策が違ってもそれは一旦横に置き、「さしあたって一致できる目標の範囲」で選挙協力などを行うことを指す。めざすところは「統一戦線の政府」、つまり共産党が参加する政権である。その先には共産党が主導する「民主連合政府」がある。まずは「統一戦線」が実現し、「国政を動かす」時代が始まったと志位委員長が言うのは、参院選などを通して民進党をからめとりつつあるとの認識があるからであろう。

 むろん、共産党は綱領に掲げた政策をいつまでも「横においた」ままにするつもりはない。共産党が綱領に明記している本来の基本政策や認識――自衛隊は「明瞭に憲法に違反する」から解体、天皇制度は「民主主義の徹底に逆行する」から廃止、「アメリカ帝国主義は世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとって最大の脅威である」から日米安保は廃棄――は順次実現していくということである。

 しかし、いかに「反安倍政権」という「さしあたって一致できる目標」があるとは言っても、こんな政策を日本国民の多くが支持するはずがなく、その実現の片棒を担ぐような共闘を続けるなら、民進党は「政権交代可能な政党」の看板を下ろすべきだろう。

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 民進党の先行きを心配をして、こんなことを言うのではない。「改憲勢力」が三分の二を獲得したなか、民進党の動向は国会での憲法論議を考える上での大きな要素だからある。

 共闘相手の共産党は、今や「前文を含めた憲法全文」一字一句変えないという完全護憲政党であり、一貫して憲法審査会での議論も不要だと主張してきた。ならば、民共路線に傾く民進党は改憲論議でも共産党に同調するのか。話はそう単純ではない。参院選で「三分の二」阻止を掲げたが、党内にはゴリゴリの護憲派ばかりではなく改憲派も存在する。

 また、民進党の最大支持組織である連合からは「共産党と信頼できる間柄にはなれない」(神津連合会長)と、民共路線に対する反発の声があがっている。そもそも連合は共産党系労組の全労連とは敵対関係にあり、大企業労組も加わる連合と大企業に重い税負担を負わせる財政政策を主張する共産党とでは政策的にも相容れない。ちなみに憲法論議についても連合は「憲法はしっかりと議論すべきだ。参院選で改憲勢力が3分の2を占めた中で、一切議論しないという方がおかしい」(同)との立場を表明している。

 民進党が「民共共闘」の深みにはまっていけば、「政権交代可能な政党」との看板や支持組織との間で矛盾がさらに深まっていく。憲法改正論議も、この矛盾と無縁ではない。当然のことながら、最も高度な政治行為である憲法改正はこうした政治のダイナミズムのなかで前進させて行かねばならないことを再認識させられる。(日本政策研究センター所長 岡田邦宏)

〈『明日への選択』平成28年9月号〉