「二重国籍」騒動が示唆する深刻な問題

 蓮舫参議院議員の「二重国籍」問題が持ち上がり、民進党の新代表に当選してからも続いている。蓮舫氏は台湾人の父と日本人の母の間に生まれ、当時の法律に従って台湾(中華民国)籍となり、十七歳のとき日本国籍を取得したが、台湾籍からの離脱手続きがなされておらず、これまで二重国籍だったことが発覚した。

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 問題はいくつも指摘できる。法律面で言えば、日本は二重国籍を認めていない。ただ、もとの外国籍からの離脱が難しいケースもあるため、国籍法では日本国籍を取得した者は外国籍からの「離脱に努めねばならない」(第十六条)としている。罰則はないものの、違法であることに変わりはない。長期にわたって離脱手続きを取らず、二重国籍状態が続けば日本国籍を失うこともあり得る。

 また、公職選挙法では国会議員の二重国籍を禁止していないので、蓮舫氏が国会議員になったことは違法ではないとされるが、かつて選挙公報に「台湾から帰化」と表記していたという虚偽記載の問題は残る(帰化は成人に適用され、台湾籍離脱が必須となる)。

 さらに彼女の発言が事実と違い問題がさらに膨らんだ。「(台湾)籍は抜いています。十八歳で日本人を選びました」と言っていたが、事実ではなかった。そればかりか、議員になる前のタレント時代には外国籍を売り物にしていた事実がいくつも指摘され(例えば、テレビのニュースキャスターになる際には「在日の中国国籍のものとしてアジアからの視点にこだわりたい」とコメントしていた)、二重国籍を確信犯的に自覚していたことも明らかとなっている。

 加えて、アイデンティティの問題も浮上した。いまでも「蓮舫」という中国名を維持し(国籍取得前は「謝蓮舫」)、「村田蓮舫」という本名を使っていないこと、日本国籍を取得した際には「赤いパスポート(注・日本のパスポート)になるのがいやで、寂しかった」(朝日新聞九二年六月二十六日夕刊)と言っていたことなどが指摘された。これでは、日本人というより「華人」としてのアイデンティティを持っていると言われても仕方あるまい。

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 問題指摘はいろいろあるが、そもそも国籍を取得する、つまり国民となるとはいかなることかという視点からの指摘は少ない。

 多くの国において国籍取得は「忠誠義務」を伴うものとして認識されている。米国の国籍法では米国籍(市民権)取得の際に「忠誠の誓い」を義務づけ、宣誓式において、「以前の君主や国家に対するすべての忠誠心」を「破棄及び断念する」と同時に「真実の信念および忠誠を合衆国に対し保持すること」を宣誓する。

 多くの国が憲法に「祖国の防衛は神聖な義務」と規定し、兵役の義務を定めるケースがあるのも、この「忠誠義務」を具体化したものと言える。台湾や韓国の兵役の義務はそれに当たる。

 日本はどうかというと、国民の義務と言っても、憲法に規定されているのは納税の義務、勤労の義務、子弟の教育の義務だけ。日本国民であるからには「忠誠義務」があるはずだが、そんなことは教えられることもない。

 そんな国籍を持つ意味が限りなく希薄な国だからこそ、国民を代表する国会議員になるにも二重国籍は問われず、蓮舫氏は二重国籍のまま国務大臣に就任でき、政権交代すれば首相になる可能性のある野党第一党の代表にさえ選ばれてしまったのではあるまいか。

 とても首相にできない人物を代表に選んでしまった民進党のバカさ加減は言うまでもないが、この騒動は戦後日本の国家意識の希薄さという、もっと深刻な問題があることを示唆していることを知っておきたい。(日本政策研究センター所長 岡田邦宏)

〈『明日への選択』平成28年10月号〉