先祖返りする朝日新聞

先祖返りする朝日新聞

改正論議自体を危険視し、憲法審査会での審議は進めるなというのは、ジャーナリズムの顔をした護憲運動ではないのか。「新聞事業の衣をかぶったマルクス主義結社」に先祖返りしたと見るべきではあるまいか。

〈『明日への選択』平成28年12月号掲載〉


 十一月三日、日本国憲法は公布七十年を迎えた。今年はこれまでとは違い、いわゆる「改憲勢力」が憲法改正案の国会発議が可能な「三分の二」の議席を獲得して初めて迎える公布の日となった。そこで、マスコミ各紙は憲法の七十年を総括するとともに、今後の憲法論議に関する社説や特集を組んだのだが、とりわけ目立ったのは、朝日新聞の「異様な護憲論」だった。

 

◆「三分の二」は無視する社説

 先ず、十一月三日の各紙の論調を見てみよう。

 読売新聞は社説の冒頭でこう書いている。「憲法はきょう、公布から七〇年を迎える。/この間、日本の社会や国際情勢は劇的に変化したのに、憲法は一度も改正されていない。新たな時代に的確に対応できるよう、国の最高法規を見直すことは国会の重要な責務だ。七〇年間も放置してきたのは、不作為と指摘されても仕方あるまい」と。そのうえで、読売は各党の憲法に対する取り組みに触れ、具体的課題として緊急事態や参議院の合区問題をあげ、民進党に「建設的な対応」を求めている。

 産経新聞は「中国や北朝鮮の動向は、自分の国を守れるかという課題を日本人に突き付け、憲法と現実との乖離を顕在化させている。/国民の手で憲法を一日も早く改正すべきことは、国の生存にも関わるという認識が欠かせない」とした上で、「すべての政党と国会議員は、主権者である国民に対し、改正案の発議を託された責任を負っていることを強く自覚してほしい」と主張した。

 両紙の積極的な改正論は従来通りだが、国会の「三分の二」を踏まえ、憲法審査会での審議促進を訴えている。

 一方、護憲論を唱えてきた毎日新聞はどうか。毎日は「この憲法が七〇年間改正されずに戦後日本を支えてきた事実」を直視すべきであり、「憲法を『敵視』するようでは、議論を前に進めることはできない」と安倍首相に注文を付ける。その一方、「他方、改憲阻止を自己目的化する硬直的な『護憲』論もまた生産的ではない」とも言い、「大切なのは、現行憲法の果たしてきた歴史的な役割を正当に評価したうえで、過不足がないかを冷静に論じ合う態度だろう」と論じている。

 この三紙は、「三分の二」の現実を踏まえたうえで、読売、産経は憲法審査会での議論の促進を求め、毎日も議論を進めることに反対はしてはいない。

 ところが、朝日新聞だけは違う。十一月二日、三日と続けて社説を発表しているが、そこには国会での憲法論議自体を否定する言葉が続く。

 例えば、自民党草案を取り上げて、憲法七十年の「この歩みを否定し、時計の針を戻そうというのが、自民党が四年前に発表した改憲草案」であるとし、「憲法に指一本触れてはならない、というのではない」と言いつつも、「長い時間をかけて積み上げた憲法の根本原理を壊そうとする動きに対し、いまを生きる主権者は異を唱え、先人たちの歩みを次世代に引き継ぐ責めを負う」と言う(二日付社説)。

 憲法審査会についても「安倍首相が憲法改正に意欲を見せるなか、今月の一〇日に衆院憲法審査会の論議が再開される。だが改憲を論じる前に、もっと大事なことがある。/一人ひとりの国民が憲法から何を読み取り、どう生かしていくか。今日公布七〇年を迎える憲法の、問いかけである」(三日付社説)

 要するに、朝日は今の憲法改正論議は「憲法の根本原理を壊そうとする動き」であり、それに「異を唱え」ることが主権者の責任である。憲法審査会で議論する以前に、憲法を「どう生かしていくか」という「もっと大事な」ことを考えよ、と言うのである。

 何をどう生かすのか論旨は不明だが、憲法審査会での論議を進めるなと言いたいことは分かる。しかし、自民党草案は審査会に提出されないことは決まっている。改正案すら出てこない前に改正論議自体が危険だというのは何とも珍妙な主張と言える。

 また、この二日分の社説のどこを読んでも、「三分の二」という言葉自体が見当たらない。参議院選挙翌日から「憲法改正に国民からゴーサインが出たわけではない」(七月十一日社説)と主張し、選挙結果に不満を表明していたことを考えれば、「三分の二」という国会の現実は認めたくないのであろう。

 しかし、どの調査をみても、国民の七割以上が国会で憲法論議が活性化することを望んでいる。その背景には国会での「三分の二」という現実があることは言うまでもない。朝日新聞は、国会の現実も世論の動向にも背を向けた異様な主張を堂々と展開していると言えよう。

 異様なのは社説だけではない。朝日新聞は……(続きはこちら)

 

【本稿の主な内容】

 ・「三分の二」は無視する社説

 ・ 歪んだ現状認識

 ・今は護憲論が改憲論を圧倒する時代?

 ・もう一つの世論調査が語る「不都合な真実」

 ・ジャーナリズムの顔をした護憲運動団体