日本酒を極める

 寒さが増して、熱燗がうまい季節になったこともあり、今、日本政策研究センターの月刊情報誌『明日への選択』では、「日本酒を極める」という連載を掲載している。日本酒伝道師、宮下弘充さんの聞き書きだ。

 かつて日本酒といえば、「安い焼き鳥屋やおでん屋で、オヤジが一杯やりながらくだをまいている」というイメージがあったが、最近は海外からも注目されるなど日本酒は「クール・ジャパン」の顔の一つとなっている。特に日本酒造りの「歴史」と「今」を知り尽くす宮下さんによると、「これから日本酒が競争する相手は、白ワインだと思わないといけない」というほど、日本酒のクオリティは目覚ましく向上しているという。

 もはや「オヤジが一杯やりながら……」というイメージで日本酒を侮っていたら恥ずかしい時代だ。以下、聞き書きの一部を紹介する。

 

◆日本酒は料理に合わせて飲むもの

 ―― フランス料理では、料理に合わせてワインの種類を選びますが、日本酒の場合は料理との絡みはどうなんですか。

 宮下 まさにそこが一番大事なところで、それを合わせないでただ酒を飲んでいるから、うまく感じないんですよ。

 僕は依頼があれば、「日本酒を飲む会」をコーディネートしているんですが、その日の料理がどうなるかという前提がないと、酒は選べません。日本酒はワイン以上に相性がある酒で、とにかく順番が大事。その日の料理が全部で何品ぐらいで何が出るのか、それに合わせて何銘柄で行くかを考える必要がある。

 例えば、高級料亭であろうが小料理屋であろうが、日本料理だったら最初はお造りが出ます。そうすると、純米吟醸の淡麗がいい。いきなり山廃や生原酒みたいな濃い酒を飲むと、あとから出てくる酒は全部、水と同じようにしか感じないから、「なんだ今日の会は!」となっちゃう(笑い)。

 ところが、料理が進んで行って、煮物や焼き鳥なんかが出てきたら、今度は純米吟醸ではダメなんです。料理の味が濃いから、酒の味をほとんど感じなくなってしまう。だから、そういう料理が出てきたときは濃い酒を合わせる。この順番を逆に出したら、大変な目に遭うんですよ。

 だから、「オレはこの酒がいいんだ」と妙にこだわる人や、「日本酒通」と称して偉そうに蘊蓄を垂れる人がいるけれども、お酒は料理に合わせて飲まないと、本当のおいしさというのは分からないんです。(『明日への選択』11月号より抜粋)

 

 ところで、今、日本酒シーンでは「純米吟醸無濾過生」という種類が人気だが、宮下さんはそれについても、こう評価している。

 宮下 いま人気の酒は「純米吟醸無濾過生」と言われる酒です。消費者サイドで(飲酒店、問屋、雑誌など)人気なのでしょうが、日本酒にはいろいろな種類があって、飲み方もいろいろです。それを判った上での好みならいいのですが、「純米吟醸無濾過生」が一番いいんだ、火入れした酒はダメだというのはちょっと違うかな、と思います。このお酒の楽しみは栓を開けてから味がどんどん変化することです。飲食店で栓を開けてからの日数違いの瓶を置いている店はまずないですね。味が変わる前に売り切ってしまっているわけです。

 火入れしてひと夏過したふくらみを感じさせる秋上がり、酒蔵で何年か寝かした古酒、ぬる燗で旨くなる山廃純米酒などどれも旨いお酒です。繰り返しになりますが、日本酒は食べ物とセット、それと飲む順番ですね。(『明日への選択』12月号より抜粋)

 

 このほか連載では、全国各地の日本酒の特徴、日本酒の歴史や、酒造りに見る日本人の技術の凄さから酒蔵の最新事情まで語られており、次号では、いまオススメの銘柄も紹介される。お酒をたしなむ人には、是非ご一読をお薦めしたい。

お申し込みはこちら